同じ分譲地内に建つ有名なパワービルダーの建売住宅でも、現場によって仕上がりにバラツキがあるって本当?

郊外で年間数千棟もの分譲住宅を供給している建売業者のことをパワービルダーといいますが、その販売価格首都圏郊外エリアでは2,000~3,000万円前後であることが多く、大手注文住宅会社が供給する住宅価格の半分程度であることが多いといいます。

(パワービルダーの土地代を除いた住宅の建築費は1,500万円程度)

そして国内トップのパワービルダーでは、年間36,000棟以上もの分譲住宅を供給しているようです。

これは1日あたりに換算すると100棟近くになり、驚異的な数といえます。

パワービルダーでは売れ残りのリスクを防ぎ資金の回転を早めるために10~15棟程度の住宅が建てられる土地を仕入れて、地場の工務店では到底真似のできないような低価格で、充実した設備を備えた新築住宅を供給しています。

それは住宅を安価で購入したい人にとっては非常にありがたいことなのですが、大量に建てて安価で販売していることで、たとえ同じ分譲地内であっても棟ごとに品質にバラツキが生じてしまうのも事実です。

実際に私が過去にホームインスペクションを行った同じ分譲地内で同時期に建築した新築住宅の場合でも、棟ごとに品質のバラツキが多く見られました。

そこで本記事では、パワービルダーが建てる新築住宅のメリットとデメリットを紹介します。

建売住宅

パワービルダーが建てる新築住宅のメリット

パワービルダー各社は年間数千棟もの新築住宅を建築しているので、当然ながら建築に使用する資材や住宅設備機器の数も莫大なものになります。

この優位性を活かして、建材や設備の仕入れ価格を極限まで抑えることができます。

たとえばシステムキッチンであれば、一般的な住宅会社が50万円程度で仕入れている場合であっても、パワービルダーでは30万円以下で仕入れることが可能になるでしょう。

そしてこの場合には見た目はほぼ同じでも、少しだけ仕様や機能が異なるパワービルダー専用の仕様であることがほとんどです。

これは圧倒的な販売実績があるからこそ、メーカーと仕入れ価格の交渉を行ってできることといえます。

さらにパワービルダーが低価格で住宅を供給することができるもうひとつの理由が、工期の短縮です。

工期を短縮することで、設計担当者や現場監督、職人といった大幅な人件費の削減に繋がります。

同じ分譲地内に建つ建物の外観デザインや外装材、内装材、住宅設備機器などの仕様を統一して設計作業の合理化を図り、現場で調整すべきことを極力省いて最短の工期にすることで、設計や現場管理の手間を抑えています。

したがって注文住宅のように着工後の仕様変更や間取りの変更などは一切受け付けていません。

また工事を下請けの工務店や建設会社に一括して丸投げするようなことをせず、基礎工事や大工工事、内装工事、設備工事などの専門業者に分離発注することで中間マージンを省いています。

こうした企業努力によって安価な住宅を供給していることが、パワービルダーが建てる住宅の最大のメリットといえるでしょう。

パワービルダーが建てる新築住宅のデメリット

パワービルダーのビジネスモデルは数区画分の土地を安価で購入し、規格化された住宅を素早く建てて早期に資金を回収するというサイクルを1年で2~3回繰り返すことです。

すなわち年間36,000棟建てるのであれば、3サイクルでも常時12,000棟もの住宅を建てていることになります。

したがって人手不足という問題を引き起こしがちです。

そのため、12,000棟の建築に関わる全ての職人が腕の良い職人というわけではありません。

10~15区画の中でも、1棟は熟練の大工が建てたので高品質な建物ができ、1棟は駆け出しの大工が担当したので不具合が多い建物になってしまったということは決して珍しくありません。

また工期が短いことで、雨の日に基礎のコンクリート打ちを行なったり、養生不足のまま必要な強度が出ないうちに型枠をばらしたりといったことも発生しやすくなります。

そして何らかの理由で少しでも工期に遅れが生じると、遅れた分を取り戻すために突貫工事になって、それが施工不良の原因になることもあります。

買主が完成を急いでいない場合でも、施工者側の都合で突貫工事になることはよくあることです。

パワービルダーが建てる新築建売住宅を購入する際の注意点

パワービルダーはできるだけコストを抑えて家を建てようとするので、現場監督は常時1人で10~20棟もの担当現場を抱えることになります。

しかしこれでは現場監督が毎日現場を巡回して、必要な品質管理を行うことなどはできません。

したがって当然現場の施工品質は大工、職人さん任せとならざるを得ないでしょう。

一方、注文住宅を建てている街の工務店にも現場監督が存在しますが、一度に担当する現場は多くても5棟程度なので、頻繁に現場を確認して品質のチェックを行うことができます。

つまり注文住宅の現場監督は品質管理が仕事の中心になるのに対して、パワービルダーの現場監督の仕事はあくまでも工程管理にならざるを得ません。

そのため現場の施工品質は大工、職人さん次第となってしまうことがほとんどです。

結果としてパワービルダーが建てる建売住宅には品質にバラツキが大きく、同じ分譲地の中でも確実にアタリ物件とハズレ物件が混在しています。

(同じ住宅会社が建てた注文住宅の品質にも多少のアタリハズレは存在しています)

したがってパワービルダーの建売住宅を購入する際には、注文住宅を建てる時以上に契約する前には第三者の専門家による住宅診断を受けて、ハズレ物件をつかまされないようにすることが大切になります。

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かめだの部屋 住宅診断士 亀田 融