特殊な建物調査に使用する主な機材にはどんなものがある?
ホームインスペクションとは主に目視で住宅のコンディションを調査して依頼主に報告するものですが、より正確な診断を行うためにレーザーレベル(建物の水平、垂直を確認するために使用する)、点検鏡、打診棒、木材含水率計、水平器、双眼鏡などを使用して調査を行うのが一般的です。
しかし通常のインスペクションとは別に、住宅を購入するにあたってより詳細な調査を求める方もいらっしゃいます。
そこで今回の記事では、特殊な建物調査に使用する機材をいくつか紹介したいと思います。
シュミットハンマー(コンクリートハンマー)

シュミットハンマーはコンクリートの圧縮強度を測定するための機器で、住宅のホームインスペクションでも基礎の強度を測定する際などに時々使用することがあります。
コンクリートに打撃を加えて返ってきた衝撃の強さを測ることで、コンクリートの強度を測定します。
コンクリートを破壊することなく強度が測定できるのがメリットですが、バラツキが大きいので、1か所だけでなく20cm×20cm以上の範囲で、20ポイントで計測して平均値を求めることを基本としています。
しかし硬度から圧縮強度を推定する方法なので、他の測定方法と比べて精度がやや低く、コンクリートの湿度や表面の粗さによって測定結果が影響を受けるというデメリットがあります。
ドローン

ホームインスペクションの検査対象の範囲は、「現場で足場等を組むことなく、歩行その他通常の手段により移動できる範囲」(国土交通省 既存住宅インスペクション・ガイドラインより)となっているため、通常のインスペクションでは屋根や外壁の調査・診断については地上から目視できる範囲のみとなります。
しかし住宅密集地などでは地上から屋根が全く見えないこともあります。
したがって足場を組んで調査が必要になる場合には、足場の架設費用が別途で必要になってしまいます。
そこで近年ではドローンを使用した調査が行われることが多くなりました。
高画質カメラや赤外線カメラなどを搭載した産業用のドローンが建物調査にも頻繁に使用されています。
鉄筋探査機

一戸建住宅の基礎に鉄筋が入っているかどうか、適正に配筋されているかどうかを配筋ピッチ(間隔)やかぶり厚さ(コンクリート表面から内部に埋め込まれている鉄筋表面までの厚さ)などを調べてチェックする際には、鉄筋探査機を使用します。
鉄筋探査機にはいくつかの種類がありますが、電磁波をコンクリートへ放射することで探知する電磁波レーダー法とコイルに交流電流を流すことで探知する電磁誘導法が主流となっています。
測定可能深度は、電磁波レーダー法が200~300mm前後、電磁誘導法が最小10mm以下、最大120~185mm程度です。
鉄筋位置やかぶり厚を測定したい場合には一般的に「電磁誘導法タイプ」の鉄筋探査機が使用されます。
電磁波測定器

電磁波とはレントゲン撮影の際に用いられるX線などの「放射線」、太陽光線や赤外線などの「光」、テレビ・ラジオ・携帯電話に利用されている「電波」等の総称で、波のように広がる性質を持ったもののことをいいます。
つまり電気と磁気の両方の性質を持つ波なので、電気や電波がある場所には必ず電磁波が発生します。
したがって電磁波は必ずしも高圧線の下や変電所といった特殊な場所だけに存在しているわけではありません。
WHO(世界保健機構)は強い電磁波の影響で小児白血病のリスクが上昇することを認めていて、それ以外にも成人のがん、うつ病、自殺、発育異常などとの関連
についても各国で研究が行われているようです。
今のところ電磁波と健康との因果関係について証明する根拠はないようですが、一部の方の中には住宅を購入する際には専門家に依頼して、実際にどの程度の電磁波が住宅内で発生しているのかの測定を求める方もいます。
赤外線サーモグラフィカメラ

赤外線サーモグラフィカメラは建物診断に良く使われていて物体の温度を可視化してくれるものですが、特に雨漏り調査や漏水調査の際に効力を発揮します。
雨漏りや漏水が発生した箇所は水分を含むため他の箇所とは温度が異なり、その部分を赤外線サーモグラフィカメラで撮影することで、温度差から不具合部分を特定していくものです。
非破壊調査なので建物を傷つけることがないのがメリットですが、雨漏りや漏水直後の濡れている状態でなければ調査することができないのがデメリットとなります。
また雨水の侵入箇所や漏水箇所まで正確に突き止めるのは困難な場合が多いので、その場合には他の調査と併用することが必要になります。
ルミテスター

ルミテスターは物体表面の汚染度を測定することができる機器で、ATP(食品や菌をはじめとする有機物の多くに存在している物質)拭き取り検査を行うことができ、その場で簡単に有機物汚れの残り具合や菌の増殖リスクを発見することができます。
検査結果がすぐに数値化されるので、清掃状況の「見える化」が可能です。
盗聴器発見機
中古住宅を購入しようとする女性の一人暮らしの方の中には、時々引っ越し日までに盗聴器が仕掛けられていないかどうかの調査を希望する方がいます。
盗聴器の多くは内臓マイクで音声を拾って無線電波で飛ばす「無線式」と呼ばれるものですが、その無線電波を受信することで盗聴器を発見するのが盗聴発見器です。
市販されている盗聴発見器を使って自分で調査することもできますが、確実に調査したい場合には専門家に依頼することをおすすめします。
その他家族の中に化学物質過敏症の方や小さなお子様がいる場合には、健康被害の代表格であるシックハウス症候群の原因となる有害物質の有無を確認しておくことも大切なチェックポイントといえます。
シックハウス症候群を引き起こす建材などに含まれているホルムアルデヒドは、現在は法律で使用制限がかかって厳しく規制されていますが、放射量は決してゼロではないのでアレルギー症状のある方は細心の注意が必要になります。
ホルムアルデヒドの量は専門の機器を使って測定することができるので、気になる場合は専門業者に調査を依頼すると良いでしょう。
以上のように住まいの調査には目的によって様々なものがあり、それぞれ使用する機材も異なります。
ホームインスペクターの中にはこのような特殊機材を用いた専門的な調査をオプションで請け負っている会社もあるので、気になる項目があったら相談してみると良いでしょう。
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かめだの部屋 住宅診断士 亀田 融