小屋裏の金物のナットの緩み
住宅の壁の内部や小屋裏には、木材の接合部に数多くの金物が取り付けられています。
これらの金物を適正な箇所に適正な方法で取り付けることで、大きな地震が発生した際にも木材どうしを緊結して、建物の被害を最小限に抑えることができるようになります。
一方でこれらの金物は上棟を終えて工程が進むと、躯体と共に壁の内側や天井裏に隠れてしまうので、完成後には見えなくなってしまいます。
人目につかない部分ですが人命にもかかわることなので、決して疎かにすることはできません。

上の写真で梁の端部にある羽子板ボルトは、地震の際に梁が外れないように引っ張っておく重要な役割があり、ボルトと座金、ナットでセットになっています。
こうした金物は1995年に発生した阪神・淡路大震災の教訓から2000年に建築基準法の改訂があって、木造住宅については構造材の継手や仕口の仕様が定められ、金物による補強が必要になっています。
しかし建物のメンテナンスやホームインスペクションを行うために完成した住宅の小屋裏に上がると、時々羽子板ボルトや火打ち金物などのナットが緩んでいるのを見かけることがあります。
このような様子を目にすると、一般の方の中には「欠陥住宅ではないか?」と不安になる方も少なくありません。
しかしナットの締め忘れなどの施工不良がなかったとしても、ナットが緩んでしまうことがあります。
構造用金物のナットが緩む原因とは?
新築住宅の構造耐力上主要な部分である柱や横架材(主に軸組工法に用いられる水平方向に架け渡される部材のことで、梁や桁などを指します)などの構造材の含水率は建築基準法施行令で15%以下(JAS規格では20%以下)であることが定められています。
※含水率(%)=(「水分を含んだ状態での木材の重さ」-「水分が全く含まれない全乾状態での重さ」)÷「全乾状態での重さ」×100
しかし木材は時間の経過と共に次第に乾燥するので、樹種にかかわらず含水率が14%以下になることがあります。
含水率が低下すれば木材が収縮してしまうので、ナットに緩みが生じることになってしまいます。
また通常は石膏ボードを張る前に大工が増し締めを行なってナットをきつく締め直しますが、建物が完成して時間が経過すると共に木材の乾燥収縮が進行すれば、ナットに緩みが生じてしまいます。
そのため現存している木造住宅のほとんどにナットの緩みが生じているといっても過言ではないでしょう。
一方、ナットが手で簡単に回せるレベルになると耐震性の低下が考えられるようになるので、決して軽視できる問題ではありません。
近年ではスプリングワッシャーを使用することでナットが緩みにくくなっていますが、当初から締め付けが不十分な場合も少なくないのです。
したがって本来であれば引き渡し後の定期点検などで小屋裏の点検を行い、可能な範囲でナットの増し締めを行なえば良いのですが、引き渡し後の定期点検でこの様なサービスまで行っている住宅会社はあまりいません。
構造金物のナットは可能な限り「増し締め」を
ホームインスペクションで小屋裏への侵入調査を行なっていると、明らかに新築当時のナットの締め忘れと思われる不具合を見つけることがあります。
意図的なものなのかどうかはわかりませんが小屋裏は人目につきにくいので、手を抜きやすい部分であることは間違いありません。
建物が完成してしまえばホームインスペクションを行なわない限り建築主が気付くことはなかったと思います。
このような施工の不備を抱えている住宅は決して少なくないでしょう。
(私が過去にホームインスペクションを行なって小屋裏の侵入調査を実施した物件の2~3割ほどで、ナットの締め忘れやビスの打ち忘れ、仕様と異なるビスの使用といった構造金物に関する施工不良がありました)
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かめだの部屋 住宅診断士 亀田 融