基礎に鉄筋を入れるようになったのはいつ頃から?

中古住宅のインスペクションを行っていると、ごく稀に鉄筋が入っていない基礎を目にすることがあります。

現在では建築基準法で基礎に鉄筋を入れることが定められているので、無筋コンクリート基礎で建てられている家はほとんどないといえますが、1970年代に建てられた家の中には無筋コンクリート基礎の家が決して少なくありません。

実際に昭和46年(1971年)の建築基準法施行令の改正時には、「木造住宅の基礎はコンクリート造または鉄筋コンクリート造の布基礎とすること」となっていました。

すなわち必ずしも基礎に鉄筋が入っていなくても良かったわけです。

皆様も基礎には鉄筋が入っているのが当たり前と思っている方が多いと思うので、これを聞くとびっくりするのではないでしょうか。

ホームインスペクション時の鉄筋探査機による基礎の鉄筋の有無の調査

コンクリートに鉄筋が入り始めたのはいつ頃?

そもそも鉄筋入りの基礎が施工されるようになったのは、昭和55年(1980年)頃に住宅金融公庫(現:住宅金融支援機構)の仕様に鉄筋コンクリート基礎が追加されてから一般化するようになったといわれています。

住宅金融公庫は平成15年(2007年)に廃止され、その権利義務は現在では住宅金融支援機構に引き継がれていますが、個人住宅向けの資金融資を受けるためには公庫の仕様書を遵守する必要がありました。

ただしこの時点では、まだ法制化はされていませんでした。

鉄筋コンクリート基礎が法律で規定され始めたのは平成2年(1990年)のことでしたが、当初は基準が曖昧で、詳細は設計者の判断に委ねられていました。

そして平成7年(1995年)の阪神・淡路大震災後の平成12年(2000年)に、ようやく基礎の寸法などが建築基準法で明示されるようになりました。

今からわずか20数年前のことです。

したがって平成2年よりも前に建てられた住宅では鉄筋を入れるかどうかは任意だったので、無筋コンクリート基礎の家が今でも数多く残っているのです。

コンクリートに鉄筋が入っているのはなぜ?

ではなぜ基礎に鉄筋を入れるのでしょうか。

基礎には主に圧縮力(押される力)と引張力が働きます。

コンクリートは圧縮力に対しては非常に強いのですが引張力に対してはとても弱いので、これを補うのが鉄筋の役目になります。

すなわち基礎はコンクリートが「圧縮力」を、鉄筋が「引張力」を負担するという考えのもとで設計されているのです。

そして基礎は、今まで大きな地震があるごとに基準が見直されてきました。

日本の建築基準法は、地震による被害とその対策の歴史が反映されているといって良いでしょう。

無筋コンクリート基礎にはどんな補強方法があるの?

そんなわけで皆さんが購入を検討している中古住宅の中には、無筋コンクリート基礎の建物が時々あります。

インスペクションを行った結果基礎に鉄筋が入っていないことがわかると、それだけの理由で購入するのを断念してしまう方が多いのではないでしょうか。

しかしたとえ築年数が古くて無筋コンクリートの基礎であったとしても、現在では入手が困難な木材や銘木をふんだんに使って丁寧に建てられた家には、近年の住宅にはない趣があるなどのたくさんの魅力があります。

そのため無筋の基礎であっても、鉄筋コンクリート基礎を新設して既存の基礎と抱き合わせ、一体化させる補強方法は比較的古くから行われていました。

ただし既存の基礎の劣化が著しい場合には、あまり有効な方法とはいえません。

そこで近年では、炭素繊維シートやアラミド繊維シートに樹脂を含侵させながら基礎に接着していくことで、不足している鉄筋量を補う補強方法が採用されるようになりました。

この工法は元々橋脚やビル建築の耐震補強工事などで採用されていたものなので、比較的信頼性の高い工法といえます。

費用も決して高額ではなく、30坪程度(1階の床面積が20坪程度)の住宅の場合で60~80万円前後です。

したがって本当に気に入った家であれば、購入後に基礎の補強を行うという選択肢があります。

まとめ

インスペクションの結果、基礎や外壁に幅0.5mm以上のひび割れが多数見られたり、床に著しい不陸があって地盤沈下が疑われたりするようなことがなければ、購入後に基礎の補強工事を検討してみても良いでしょう。

ホームインスペクターの中には単に住宅診断を行うだけでなく、上記のような適切な補強工事のアドバイスや実際に工事を行うための相談にも応じてもらえる人もいます。

リフォーム会社や不動産会社とは異なる視点から中立的なアドバイスを受けるためにも、積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

『かめだの部屋』住宅診断士・ホームインスペクター 亀田