コロニアル屋根からの雨漏りの原因と対策

近年の住宅では屋根から雨漏りしているケースは少なく(平らな陸屋根は除く)、雨漏りの原因の多くはサッシなどの開口部廻りやバルコニー廻り(笠木廻り、ドレイン・排水口廻り、防水層の立ち上がり等)、軒天井と外壁の取り合い部分などから雨水が侵入しているケースです。

しかしごく稀に屋根からの雨漏りが疑われることがあり、雨漏りの原因調査の依頼を受けて屋根を点検してみると、コロニアル屋根が雨漏りの原因になっていることがあります。

コロニアルとは?

「コロニアル」とは戸建住宅や木造のアパートなどで良く使用されているセメントを主成分とする厚さ5mm程度の薄くて平らな屋根材のことをいいます。

「カラーベスト」や「化粧スレート」、「スレート瓦」、「平板スレート」などとも呼ばれることもあり、誰もが一度は目にしたことがあるお馴染みの屋根材です。

本来は総合外装建材メーカーのケイミュー株式会社(旧株式会社クボタ)が取扱っていた屋根材の商品名でしたが、流通量が多いため、いつしか「平型化粧スレート」全般の呼び名になっています。

コロニアル屋根

近年(製造年2008年以降)のコロニアル屋根材の耐久性は30年程度といわれていますが、屋根の頂上部分や四隅に設置されている棟板金は築後10~15年程度で固定している釘やビスが緩んで強風で飛ばされてしまったり、屋根材表面の塗膜が劣化して雨水を吸収しやすくなったりしてしまうので注意が必要です。

コロニアル屋根の雨漏りの原因

コロニアルは意匠性と耐久性のバランスに優れ、比較的安価でかつ施工しやすいため、今や全国に普及している国内の代表的な屋根材のひとつです。

しかし長年メンテナンスを行わずに放置してしまうと、ひび割れや欠けなどの劣化が生じて雨漏りを引き起こすことがあります。

その代表的な5つの事例を見ていきましょう。

  1. 経年劣化で表面の塗膜が劣化している

コロニアル表面の防水塗膜は施工してから約10~15年程度で劣化して、やがて防水性能や撥水性能が損なわれてしまいます。

そしてコロニアルに雨水が浸透するようになると、湿潤状態が続いて太陽光による乾燥で反りやひび割れが発生します。

反りやひび割れが生じるとそこから雨水が侵入して下地材を傷め、雨漏りに繋がります。

したがって定期的な塗装が不可欠となります。

  1. 棟板金に不具合が生じている

前述した棟板金に不具合が発生するとそこから雨水が侵入して雨漏りの原因になることがあります。

棟板金を固定している釘やビスは金属であるため気温差で収縮を繰り返し、徐々に浮きが生じるようになります。

すると浮いた釘穴から雨水が侵入するようになり、木製の下地材を腐食させるようになります。

この状態で台風に見舞われたり突発的な強風を受けたりすると、棟板金が飛散して雨漏りに発展するようになってしまいます。

  1. 釘穴から雨水が侵入する

コロニアルの固定には専用の釘が使われていますが、釘は防水紙(ルーフィング)や野地板の下に位置する垂木まで到達させる必要があるため、防水紙を貫通させなければなりません。

現在主流になっているアスファルトルーフィングには合成ゴムが含まれているので釘が打ち込まれても釘穴を塞ぐようになっていますが、ルーフィング自体にも寿命があるので、経年劣化により雨水が侵入してしまうことがあります。

  1. コーキング(シーリング)が劣化している

外壁との取り合い部分や天窓(トップライト)廻りなどにはコーキング材が充填されていることがあります。

しかしコーキングも紫外線や風雨などの影響を受けて、経年により硬化してひび割れが発生したり剥がれてしまったりしてしまいます。

そのためコーキングの劣化が雨漏りの原因になることがあります。

  1. 屋根塗装を行った際の施工不良

コロニアル屋根を塗装した際には塗料が乾燥した後に、「縁切り(えんきり)」といってカッターや皮すきなどを使って屋根材の重ね目に隙間を開ける作業が必要になります。

これを行っておかずにいると、コロニアルの裏側に入り込んだ雨水の通り道がなくなってしまうので屋根材の下に滞留してしまい、強風や大雨など想定外の雨が降ると雨漏りの原因になってしまいます。

しかし一枚ずつカッターで切れ目を入れていくのは思ったよりも手間がかかる作業なので、これを省略してしまう業者が時々います。

そこで近年ではタスペーサーという部材をコロニアルの重ね目に差し込むことで簡単に縁切り作業ができるようになったので、これを使用する業者が増えています。

タスペーサーで縁切りを行っている様子

まとめ

雨漏りが発生するとできるだけ自分で何とかしようと思って、手あたり次第隙間にコーキング材を充填しようとする人がいますが、見当違いであることが多く、特に屋根での作業には危険が伴います。

したがってまずは専門家に依頼してしっかりと調査を行い、雨漏りの原因を究明することが重要です。

しかし建築士や普段住宅診断を行っている人であっても、リフォームや改修工事の経験がないと前述した「縁切り」のことなどは知らない人もいるので、業者の選定には注意が必要です。

専門家によるホームインスペクションについてはこちら

かめだの部屋 住宅診断士 亀田 融