新築にはホームインスペクション(住宅診断)は必要ないのか?
先日インターネットを見ていて、たまたま「新築にはホームインスペクション(住宅診断)は不要です【気をつけて】」と読者に注意喚起を促しているような記事を見つけました。
地方の不動産会社の店長さんによって書かれた記事のようですが、ホームインスペクションが不要な理由としては次のようなことが書かれていました。
・そもそも新築は認定機関に建築確認申請書を提出して審査を受け、確認済証が発行されて初めて建築がスタートする
・完成後には完成検査を受け、予定通りに建築されている場合は検査済証が発行される
非常に的外れの内容ですが、新築の住宅は「すでにホームインスペクションを受けている状態だから検査済証の交付さえ受けていれば安心」ということのようです。
しかし、建築確認の完成検査とホームインスペクションとは全く別のものです。
建築確認の完成検査は図面通りに建築されているかどうかを確認する程度のもので、「品質確保を目的とした検査」ではありません。
近年ではホームインスペクションの認知度も徐々に上がって、不動産業者の中にも不動産の取引を行う前に顧客にインスペクションを勧めるケースが増えてきました。
一方、一部の不動産業者は、いまだにホームインスペクションについて誤った認識を持っていて、中には自分たちの利益の邪魔になる(ホームインスペクションの結果によっては不動産の売買契約の機会が失われる)と考えている人も少なくないようです。
そこで今回の記事では、「新築住宅にはホームインスペクションは不要なのか?」という点について詳しく解説したいと思います。
「新築住宅にはホームインスペクションが必要ない」という理由は?
不動産業者の中には顧客が新築住宅を購入しようとする際に、「ホームインスペクションは必要がない」という人がいますが、その理由には次のようなことがあります。
・新築住宅には10年間の保証がある
・瑕疵保険の検査がある
・住宅を建てる際には第三者機関が検査を行っている
しかしこれまでもお話したように、瑕疵保険の検査は建物を隅々まで詳細に検査するわけではなくほんの一部の検査項目についてのみ行うもので、かつ保証の対象となるのは構造耐力上主要な部分と雨水の侵入を防止する部分に限られています。
したがってすべての欠陥が保証の対象になるわけではありません。
さらに、建築確認の完了検査はあくまでも建築確認申請どおりの建物が完成したかどうかを確認するためのものなので、施工不良があるかどうか、欠陥住宅であるかどうかを判断するためのものではありません。
したがって「検査済証が発行されている=施工不良がない」というわけではないのです。
そして、実際にホームインスペクションを行うと、第三者機関から指摘されなかった不具合や欠陥が見つかることはよくあることで、その場合にも売主がすぐに不具合を認めて補修や手直しに応じてくれるとは限りません。
また、新築住宅には「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によって引き渡しから10年間の保証(瑕疵担保責任)が義務付けられていますが、売主が責任を負うのは前述したように基礎や柱、梁などの「構造耐力上主要な部分」と屋根、外壁などの「雨水の侵入を防止する部分」のみで、それ以外の部分の瑕疵や欠陥は保証対象外となっています。
次に実際のホームインスペクションで見つかった新築住宅の不具合事例を紹介します。
ホームインスペクションで見つかった新築完成物件の不具合事例
完成した新築住宅のホームインスペクションを行うと、建物の品質を著しく損なうような欠陥を見つけることがあります。
最もよく見かけるのは断熱材の施工忘れで、一部断熱材が充填されていなかったり、施工が雑で断熱材がすき間だらけだったりすることがあります。
中には床下の断熱材(スタイロフォーム)が下に落ちてしまっていることもありがちで、このような状態では建物の断熱性能が損なわれてしまいます。
また、構造材の接合金物のナットの締め忘れやビスの締め忘れなども時々目にします。
これは構造耐力上重要なことなので、決して軽視できることではありません。
そして、稀にユニットバスの換気扇のダクトの接続がされていないことがあります。
そのまま放置しておくと浴室の蒸気が天井裏に放出されて、天井裏がカビだらけになってしまう恐れがあるため要注意です。
その他では基礎や外壁の配管貫通部の周囲に隙間があったり、ベランダ防水に施工不良があったりすることもあり、床下に水が溜まったり、雨漏りの原因になったりしてしまいます。
本来であれば瑕疵保険の検査で指摘されるべきことですが、検査に見落としはつきものです。
もちろん新築なので劣化事象はもちろん、必ずしも大きな不具合があるわけではありませんが、それはそれできちんと調査しておくと購入後も安心です。
まとめ
近年はホームインスペクションが不動産業界の中でも浸透してきたこともあって、調査に協力的な不動産業者が多くなってきました。
しかし、いまだにホームインスペクションについて認識不足の不動産業者も数多く存在していて、顧客に誤った説明をしているケースも見受けられます。
特に、新築住宅を購入しようとする場合には、中古住宅と比較して経年劣化がない分、不具合の発生度合いが少ないため、インスペクションを行うかどうかの判断で迷ってしまうことが多いでしょう。
しかし住宅の購入は一生のうち何度も経験することではなく、新築住宅であればなおさら後悔はしたくないと思います。
ホームインスペクションを実施するかどうかの判断をする上で、今回の記事を役立てていただければ幸いです。
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かめだの部屋 住宅診断士 亀田 融