外壁のタイル張りはメンテナンス不要?

近年の住宅の外壁材には窯業系サイディングが使用されることが多くなっています。

ひと昔前のサイディング材は現場で塗装されるのが一般的でしたが、現在は品質管理が行き届いた工場で塗装してから出荷されるものがほとんどなので、従来のものよりも優れた耐久性を持っています。

それでも外壁は常に雨や紫外線にさらされ続けているので塗膜の劣化は避けることができず、新築して10年が経過する頃になると徐々に塗膜の保護機能が失われて塗り替えが必要になります。

したがって築10~12年を目安に足場を組んで塗り替え工事を行わなければならず、その際には100万円前後の費用がかかります。(費用は建物の形状や大きさによって異なります)

一方でタイル張りの外壁は一般的なサイディングよりも高級な仕上げで、「メンテナンスフリー」といわれています。

外傷や自然環境に強くて紫外線による色あせや変退色もなく、塗り替えの必要がないので、新築時にお金をかけておけば後から費用が発生しないと思われがちです。

しかし実際にはそんなことはありません。

「メンテナンスフリー」は「メンテナンスが不要」ということではなく、正しくは「メンテナンスサイクルが長いのでメンテナンスコストを抑えることができる」という意味合いだと思っておいた方が良いでしょう。

基本的にメンテナンス不要の建築資材は存在しません。

そこで本記事ではタイル張り外壁の劣化事例や、劣化具合の診断方法についてご紹介します。

タイル張り外壁の経年劣化の事例

タイル張りの外壁はサイディング張りの外壁よりもはるかに経年劣化が少ないことは事実です。

タイルは土や石・砂などの原料を成型して約1300度もの高温で焼き固めた無機質のものなので、経年劣化が少ない素材としてマンションやビルなどの外壁材としてよく使われていますが、住宅で使用されることも決して少なくありません。

またサイディングやモルタルなどの外壁材が本来は吸水率の高い素材なので塗膜で保護しているのに対して、タイルはほぼ水を吸わないので吸水による雨漏りや凍害を引き起こす恐れもほとんどありません。

しかしタイルと下地材との接着が悪いために外壁タイルの剥離によるトラブルが発生することは決して少なくありません。

その原因には施工不良と経年劣化がありますが、最悪のケースではタイルが剥がれて落下してしまうこともあります。

外壁タイルの浮き
外壁タイルの浮き

タイルの貼り付け時に使用する接着剤には耐用年数があり、それと共にタイル目地の隙間を埋めるコーキング材(シーリング材)にも寿命があります。

一般的には接着剤の耐用年数は20年程度、コーキング材の耐用年数は10年程度といわれ、工事中に施工不良などがあると築5年程度でタイルに浮きが発生してしまうこともあります。

そのまま放置し続けて万が一タイルが剥離して落下してしまうことにでもなれば、重大な事故につながってしまいます。

実際に建物の外壁タイルが落下して通行人が怪我を負う事故が毎年のように発生しています。

したがって外壁をタイル張りとした場合であっても、定期的な点検やメンテナンスは不可欠といえます。

外壁タイル張りの施工方法

外壁タイル張りの施工方法には大きく分けて湿式と乾式の2つの施工方法があります。

湿式工法とはモルタルの下地の上にタイルを張り付けていく昔ながらの工法で、乾式工法とはタイルを張り付ける際にモルタルを使用せずに接着剤で貼り付ける、または特殊な金物に引っ掛けて張っていくという施工方法になります。

近年の住宅の多くには、後者の乾式工法が採用されています。

タイル張り外壁の劣化具合の診断方法

通常であれば10年程度で外壁タイル自体を張り替える必要はありませんが、定期的に外壁タイルの浮きなどをチェックして、必要に応じて部分的な補修やコーキング材の打ち替えなどを行う必要があります。

また大きな地震が発生した後などには、タイルやコーキングにひび割れが発生して剥離することがあるので、注意が必要です。

前述したようにタイル自体は吸水することはありませんが、モルタル目地が吸水することによってタイルの付着力が低下して浮きが発生したり、寒冷地であれば浮きが発生した箇所から侵入した水分が凍結・融解して乾燥・収縮を繰り返すことでタイルの付着力がさらに弱まったりしてしまいます。

そしてこのような状態になっているケースは比較的よく見られます。

そこでたとえ外壁がタイル張りであったとしても、定期的に点検を行うことが不可欠となります。

外壁タイルの浮きを調査する方法には、タイルの浮きを叩いて調査する「打診調査」と特殊カメラで建物が発する熱を撮影して熱分布画像からタイルの浮きや不具合を調査する「赤外線サーモグラフィ調査」があります。

しかし信頼性の面では打診調査の方が高く、戸建住宅の場合には打診調査がよく行われています。

打診調査とはパルハンマー(打診棒)と呼ばれる道具を使用して外壁のタイル表面を軽く叩いたり自動車のワイパーの要領で軽く転がしたりして調査することで、発生する音の違いから浮いている箇所を特定します。

ただし本格的に調査するためには足場やゴンドラなどが必要になるので、まずは地上やバルコニー、2階の窓などから手が届く範囲の調査を行なって、不具合がどの程度発生しているのかを把握することが大切です。

外壁タイルのパルハンマーによる打診調査
外壁タイルのパルハンマーによる打診調査

まとめ

高級住宅と呼ばれるものの中には外壁が全面タイル張りの建物が少なくありませんが、決してメンテナンスが不要というわけではありません。

適切な時期にメンテナンスを行うことは不可欠なので、定期的に点検を行う必要があります。

また建物の基礎部分に石やタイルが貼られていることがありますが、石やタイルの裏側に隙間があると、シロアリの通り道になるリスクがあるので注意が必要です。

気付いた時にはシロアリ被害が拡大していたということにもなりかねません。

一度浮いたタイルが復元することはないので、定期的な点検を怠らないようにしましょう。

かめだの部屋  亀田 融