住宅のメンテナンスは何故必要?

多くの人が1年に1回健康診断を受けるように、我が国では車も2年に1回の車検制度が確立されています。

車検切れの自動車を運転した場合には罰則や罰金の対象になるほか、免許停止などの行政処分を受けることがあります。

では住宅の場合はどうでしょうか?

住宅は車よりも高額なことがほとんどで人の命と財産を守る大切なもののはずですが、定期的な点検やメンテナンスが法律で義務付けされているわけではありません。

台風や地震、雨漏りなどへの対応は所有者任せで、住宅会社が独自に行なっている定期点検も決して義務ではありません。

そして万が一メンテナンス不良が原因で大地震発生の際に全壊・半壊して近隣に悪影響を与えたり周辺道路の通行に支障が生じたりしても、法的な罰則規定があるわけではありません。

しかし国内ではどこでも大地震が発生する可能性があるので、住まいは常に健全な状態に保っておく必要があります。

そこで本記事では、住宅のメンテナンスについて掘り下げて考えてみたいと思います。

住まいの定期点検イメージ

国内における住宅の問題点

建物の強度を規制するもののひとつに建築基準法があります。

しかし建築基準法は大地震の発生後に構造規定を見直して強化されることが多く、そうなった場合には基準法改正前の建物は「既存不適格建築物」と呼ばれるようになります。

そして既存不適格建築物は、そのまま継続利用してもペナルティを課されることはありません。

あくまでも建築当時は合法的に建てられたものであるからです。

しかし強度的に不安がある場合には大きな地震が発生したときには倒壊する危険性が高いということになるので、新しい建物以上にメンテナンスを定期的に行って、建物を常に健全な状態に保っておくことが重要になります。

そして現行の法律に適合させるための耐震改修工事を行う場合には、まとまった費用がかかってしまうことが珍しくありません。

一方で近年の新築住宅の場合には、建築した住宅会社による定期点検が行われることが多くなっています。

しかし住宅会社にとってはこれを営業の機会と捉えていることが多く、顧客との関係性を維持することで紹介営業を推進したり、リフォームの受注につなげようとしたりすることも決して珍しくありません。

したがって純粋に建物の状態を調査・診断することが目的とは限らないので注意が必要です。

またメンテナンスの担当者に対してはノルマを課す場合もあり、ノルマを課された人は当然請負金額が増える工事を建築主に提案することになります。

状況によってはメンテナンス工事ではなく、大掛かりなリフォームを提案されることもあるでしょう。

このように築年数が古い住宅であっても新築住宅であっても、住まいのメンテナンスを行う際にはさまざまな問題が発生します。

それでも住まいのメンテナンスが必要になる理由

建物は常に風雨や紫外線の影響を受け続けているので、経年劣化を避けることができません。

築後10年以上経過すると、屋根材・外壁材の剥がれやひび割れ、バルコニーの防水層の劣化、外壁シーリングの劣化、水回り設備の不具合、シロアリの食害などはどんな家でも発生しやすくなります。

そして家の劣化をそのまま放置し続けるとさらに劣化が進行してメンテナンス費用が高額になり、建物の資産価値も大幅に減少してしまいます。

一方では定期的に適切なメンテナンスを行うことで、経年劣化を遅らせながら長く快適に住み続けることができるようになります。

居住用建物の構造別の法定耐用年数は木造22年、鉄骨造19~34年(鉄骨の厚みによって異なる)、鉄筋コンクリート造47年といわれていますが、これは税法上の減価償却費を計算するために算出されたものなので、実際の耐久年数ではありません。

適切なメンテナンスを定期的に行っていればメンテナンス不能で建て替え以外の選択肢はないというほどの酷い状態になることは滅多になく、実際に築50年を超える木造住宅も数多く存在しています。

すなわち建物はメンテナンスを繰り返すことで半永久的に持たせることも決して不可能ではありません。

そのためには10年以内ごとに点検を行なって、不具合箇所に対して適切なメンテナンス工事を行うことが不可欠になります。

まとめ

住宅は築年数が経過すると、経年劣化を避けることができません。

しかし自動車の車検制度のように定期的な検査が法律で定められているわけではないので、自己判断で点検やメンテナンスを行わなければなりません。

早めにメンテナンスに着手することで工事にかかる費用を抑えることができるようになるので、まずは築年数の経過に合わせて適切なタイミングで信頼できる専門家に調査・診断を依頼するようにしましょう。

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かめだの部屋 住宅診断士 亀田 融