住まいの建替か、リノベーションか判断は慎重に!

私がホームインスペクションを事業として行うようになる前には、約33年間住宅会社に勤務し、13年間新築工事(注文住宅、賃貸マンション、官庁工事等)の現場監督を行った後に約20年間住宅リフォーム事業に従事していました。

そのため時々親から相続した古い家に住んでいるという方から、その家を解体して建て替えるのとフルリノベーションして快適な住まいにするのとどちらが良いのか、既存の建物を診断した上でアドバイスして欲しいと言われることがあります。

ハウスメーカーに相談すると建て替えを勧められ、リフォーム会社に相談するとリノベーションを勧められるので、どちらが良いのかわからなくなってしまう様です。

そしてすでに住宅を所有している人ばかりでなくこれからマイホームを入手しようとしている人の中にも、新築住宅を購入するのか中古住宅を購入して自分の好きなようにリフォームするのかで悩んでいる方が多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、新築かリフォームかを判断する際に知っておくべきことについて紹介したいと思います。

在来工法模型

住宅の寿命と工事中に必要な費用

建て替えかリフォームかを判断する上では専門家による建物のチェックが必要になることはいうまでもありませんが、リフォームで以前よりも快適で安全な住宅に生まれ変わらせることも十分に可能であるといえます。

単に耐震補強や断熱改修などを行って最新の住宅設備機器を導入するだけでなく、リフォームに手慣れた業者であれば間取りについてもリフォームプランナーが新しい感覚を取り入れて、暮らしやすいプランを提案してくれることでしょう。

ただし現在の住まいの状態によっては、建て替えるのと同等の費用がかかってしまうこともあるので注意が必要です。

実際に私も1,000万円以上の大規模リフォームの提案や施工管理を数多く経験し、中には3,000万円を超えるリノベーションを行ったことも複数回ありました。

しかしいずれの場合も、建て替えるとそれ以上の費用がかかることが予想されました。

一般的に建て替えが必要になるのは、住宅の耐久力に問題が生じている状態で主に築年数が判断基準になることが多いといえますが、それだけで決めてしまうのは早計といえます。

たとえ築年数は古くてもメンテナンスが行き届いた丁寧に建てられた家であれば、築30年以上経過していても程度の良い家は多数存在しています。

そこで住宅の寿命は、次の2つで判断することが大切といえます。

  1. 構造的な耐久力が限界にきていて、地震や台風などの自然災害で倒壊する危険性が高い場合
  1. 耐久性には問題がなくても家族構成の変化や住む人の加齢に伴い、住まい方自体に変化が生じて不便な住まいになってしまった場合

しかしこれらの場合であっても決してリフォームで対応することができない訳ではありません。

肝心なのは工事費がどれくらいかかるのかという点です。

さらに工事費以外にかかる費用や引き渡しまでにかかる期間も軽視することはできません。

たとえばリフォームであれば大規模なリノベーションであったとしても3か月~6か月で完成してしまうことがほとんどなのに対して、建て替えの場合には最低でも半年から1年以上かかることが普通で、その間の仮住まい費用なども必要になります。

ただし大掛かりなリフォームになるほどリフォーム業者の技量が重要視されるので、消費者には慎重に業者選定を行うことが求められるようになります。

建て替えに有利な住宅ローンと税制優遇

建て替えばかりでなくリフォームでも大掛かりなリフォームになるほどまとまったお金が必要になるので、ローンを利用する方が多いと思います。

しかし新築の場合には借り入れ可能な金額が高額で返済期間も最長で35年ですが、リフォームローンの場合には借入可能な金額は500万円までで返済期間は10年以内になるのが一般的です。

また新築住宅の場合には、一定の条件を満たせば固定資産税の減額措置などの税制優遇措置を受けることが可能になります。
リフォームにも税制優遇措置がありますが、新築の方が長い期間減額措置を受けることができます。

まとめ

建て替えとリフォーム・リノベーションにはどちらにもメリットとデメリットがあるので、一概にどちらが良いとはいえません。

しかしリフォームを行うことで性能面・機能面で建て替えるのとほぼ同様にすることができ、総額の予算でも建て替え費用の7割程度に抑えることができるのであれば、リフォームを検討してみても良いと思います。

ただし新築の業者と比較してリフォーム業者の中には技量の低い業者やそもそも建設業の許可を所有していない業者、悪質な業者の割合が多いので、業者選びにはより一層注意が必要になります。

不安であればホームインスペクターなどの専門家を味方にして、工事の打ち合わせ同席や見積もりチェック、工事中の品質チェックなどを依頼するようにすることをおすすめします。

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