建築行政の本音とタテマエ、そして第三者の専門家による住宅検査

建物は建築基準法などのさまざまな法令の基準を満たさなければなりません。
建物を建築する前には建築士が図面を作成して、建築主事または指定確認検査機関に建築確認申請書を提出し、建築基準法などの関係法令に適合しているかどうかの審査を受けます。
そして問題がなければ「確認済証」を取得して、工事に着手できるようになります。
さらに工事中には設計図書通りに工事が実施されているかどうかを確認する「中間検査」を受け、完成時には「完了検査」を受けます。
完了検査に合格すれば「検査済証」を受け取ることができ、検査済証を受け取ってはじめて建物を使用することができるようになります。
ところが検査済証が発行されているのだから欠陥住宅であるはずはない、ましては登記も済んでいるのだから違反建築であるはずがない、といった建築主の考えが簡単に覆されてしまうことが少なくありません。

また住宅を新築する際にはほかにも様々な検査や保険の制度がありますが、これらも必ずしも安心できるものとはいえません。
その理由を説明します。

役所の検査は正しい施工で完成していることを証明するものではない

中間検査や完了検査に合格していたとしても、検査でチェックする項目は限られています。
したがって建物が設計図どおりの安全性、耐久性、耐震性などを確保できているかどうかのチェックはほとんどされておらず、施工段階でのミスや不具合があっても見落とされているケースが多いといえます。
そもそも中間検査や完了検査でチェックされるのは主として建築基準法の「集団規定」(該当する建物が都市計画に沿って建てられているかどうか)に該当する部分であって、「単体規定」(個々の建物の技術的な基準を定めたもの)をチェックするものではないからです。
したがって完了検査で検査員が天井裏や床下に潜って検査することはありません。
実際に完了検査に合格している建物であっても、欠陥住宅は世の中に数多く存在しています。

第三者が行なった完成検査で見つかった床下・小屋裏の不具合事例

ナットの締め付け不良画像

ナットの締め付け不良

筋違プレートのビスなし画像

筋違プレートのビスなし

床下の鋼製束のビスなし画像

床下の鋼製束のビスなし

基礎パッキンの施工不良

基礎パッキンの施工不良

これらはすべて役所の完了検査に合格して検査済証が交付された住宅です。

住宅瑕疵担保責任保険の検査内容は限られたものだけ

新築住宅の住宅瑕疵担保責任保険は、住宅瑕疵担保履行法により2009年10月から保険の加入または法務局への供託が義務化されたもので、保険に加入するためには現場検査が必要になります。(供託の場合には検査なし)
しかし検査の対象となる部位は、構造耐力上主要な部分及び雨水の侵入を防止する部分に限られるので、欠陥住宅や不具合を未然に防ぐことができるようなものではありません。

住宅性能表示制度による検査は簡易的なもの

住宅性能表示制度は「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づくもので、構造耐力、省エネルギー性、遮音性などの性能の表示に関する現場検査を行います。
住宅性能評価書を取得した住宅は資産価値が高くなると共に、住宅ローンやフラット35で優遇されるケースがあります。
しかし検査の内容は主に設計図面等と施工状況との照合を行う簡易的なものなので、欠陥住宅や不具合を未然に防ぐことを目的とするものではありません。

フラット35の検査は住宅ローンを利用するための検査

フラット35の検査は、住宅ローンを利用するために住宅金融支援機構が定めた技術基準を満たしているかどうかについて検査機関等が確認するための検査になります。
しかしこの検査も不具合や施工不良の有無をチェックするためのものではありません。

いずれの検査も1回あたり10~15分程度で済んでしまうことが多く、検査員の説明等は一切ありません。
これらのことから、ハウスメーカーや住宅会社、工務店の営業担当者が「当社の建物は第三者の検査に合格しているので安心です」といっても、決して安心できるものとはいえません。
そして万が一引き渡し後に欠陥や不具合が見つかったとしても、施主が自ら対応せざるを得ないのが実情です。

新築住宅の工事中及び引き渡し時の第三者による検査の重要性

住宅検査とは、建築士などの有資格者によって建物に施工不良や不具合がないかどうかをチェックしてもらうことをいいます。
建物の施工会社や不動産会社と関わりを持たない第三者機関による検査で、工事中でも検査を行ってくれる第三者機関も存在しています。
注文住宅であれば当然のことですが、建売住宅であったとしても不動産業者等の承諾が得られれば工事中に検査することも可能です。

新築住宅の場合には、基礎配筋、基礎完成、構造躯体、断熱工事、防水工事、屋根・外壁工事、完成時などの重要な工程で検査を行う(5~6回程度)のが一般的で、完成時のみ検査を依頼することもできます。
費用は30~35万円程度(検査回数5回程度の場合)で、建物の延べ床面積が40坪を超える場合には割増料金になることが多いようです。

また新築住宅の場合には図面があるので、図面との整合性などもチェックしてもらうことができます。
そして第三者の専門家が検査することで施工会社の意識を高めることができ、施工ミスや手抜き工事などを未然に防ぐことに繋がる効果も期待できます。

普段は住宅診断を行っているホームインスペクターの中にもこのような新築住宅の中間検査や完成検査(内覧会)に対応している人もいるので、一度問い合わせてみると良いでしょう。

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『かめだの部屋』住宅診断士・ホームインスペクター 亀田