新築住宅にもホームインスペクションを

~建物の完成度を上げるには~

これから住宅を購入しようと考えている方や住まいのリフォームを検討している方の中には、欠陥住宅やリフォーム工事のトラブル事例をインターネットの口コミサイトなどで見て、不安になっている方も多いのではないでしょうか。
家を購入するにしてもリフォームするにしても、新車で高級車を1台購入するよりも高額な費用がかかってしまうので当然のことです。

現場から見た住宅業界の現状

私は住宅会社に30年以上在籍して注文住宅、賃貸マンションの新築工事や官庁工事、リフォーム工事の現場管理を行い、直近の7年間は独立して顧客からホームインスペクションの仕事を請け負っています。
住宅会社やリフォーム会社からの目線と顧客からの目線を双方経験できたことで、それまで見えなかったことも深く理解できるようになりました。

住宅業界やリフォーム業界は古くから「クレーム産業」と呼ばれ、欠陥住宅や悪徳リフォーム業者の話題は絶えることがないのが現状です。
しかしこの業界に一歩足を踏み入れれば、「顧客満足」を目指して毎日夜遅くまでコツコツと汗水流して働いている若い人たちがたくさんいるのも事実です。

一方では、毎年数多くの方が欠陥住宅や悪質なリフォーム業者の被害にあってしまうのも事実で、時として優良といわれている住宅会社やリフォーム会社であっても、顧客からのクレームを受けて大きなトラブルに発展してしまうことがあります。

今回はこうしたことが起きてしまう理由や、第三者のホームインスペクションが必要な理由を紹介したいと思います。

リフォーム事例画像

リフォーム事例

非常に多忙な現場監督

住宅の建築現場ではマンションや商業ビルなどの現場と違って、ひとりの現場監督が7~8棟程度の現場を担当しているのが普通で、パワービルダーやローコストハウスメーカーの場合には10棟以上掛け持ちしていることも珍しくありません。

そして現場監督の仕事には、現場で施工品質のチェックや進捗状況の確認、職人との打ち合わせ、安全管理等を行うだけでなく、実行予算の作成、下請け業者への工事注文書の作成といった原価管理や、施工図面の作成、設計担当者及び営業担当者との打ち合わせ、社内会議への出席など様々な業務があります。

その他では引き渡し済の現場のお客様から呼び出されたり(アフターサービスやリフォームの相談)、地鎮祭や上棟式へ参加したりするなど非常に多忙な毎日なので、現場に行くことができるのは週に1回程度になってしまうことも決して珍しくありません。

ハウスメーカーや工務店としても現場監督の数を増やすとコストアップになってしまうので十分な人手を用意することができず(業界内の人手不足問題もあります)、また近年では労働時間の短縮が求められるようになったので、更にこの問題に拍車がかかるようになっています。

すなわち「現場監督の人手不足=施工不良の増加」がよくある業界内の負の図式といえます。

それでも大工や職人が自分の仕事をきちんと行ってくれれば良いのですが、年度末などの多忙な時期になると職人が不足しがちなので、急いで新しい職人を探して工事を発注せざるを得なくなることが多くなります。

そしてその場合には、どうしても施工不良が増加してしまうことになりがちです。

こうした問題は住宅業界全体が抱えているといっても過言ではないでしょう。

ホームインスペクターの役割

ハウスメーカー、工務店の中にも社内検査体制が整っているケースが増えていますが、決してすべての工程ごとにしっかりとした検査を行っているわけではありません。
また瑕疵保険や住宅性能評価に関わる検査を第三者検査として説明している住宅会社も少なくありませんが、それらの検査は限られた時間内に限られた範囲の検査を行うものがほとんどで、決して施工品質を向上させることを目的とするものではありません。

したがってハウスメーカーや工務店の人手不足を補うためにも、これらの会社との利害関係を持たない中立的な立場のホームインスペクターをご自身で選んで、検査を行うことをおすすめします。

第三者の専門家に新築住宅やリフォーム工事の検査を依頼するメリット

第三者の専門家に検査を依頼するのは、決して建物の「粗探し(あらさがし)」をするのが目的ではありません。
様々な事情により現場監督が指摘することができなかった不具合を指摘して、是正することができるのが最大のメリットといえるでしょう。
また施主が自分では強く言えなかったことでも専門家が代弁してくれることもあるでしょう。
そしてホームインスペクターによる検査を行うことを施工会社に事前に伝えておくことで、施工会社が緊張感をもって現場管理を行ってくれるケースもあります。

たとえ新築住宅であってもリフォーム後の住宅であっても、人が施工する限り何らかの不具合や施工忘れなどがあるもので、何も問題がない家などほとんどありません。
したがって現場監督が見落としてしまったことでも二重チェックをすることで、より建物の完成度が上がることは間違いないといえます。

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『かめだの部屋』住宅診断士・ホームインスペクター 亀田