住宅の地盤について

どんなに丈夫に建てられた建物であったとしても、それを支える地盤が軟弱では建物が沈下してしまう恐れがあります。

東日本大震災で起きた地盤沈下

2011年3月に発生した東日本大震災。
当時私が勤務していた住宅会社に近い千葉県浦安市では、震災による液状化で道路がひび割れ、マンホールは地面から1メートル以上も飛び出して、多くの家が傾いてしまいました。
約3万7,000世帯が被災したといわれ、震災後の1年間近くは私が在籍していた会社にも沈下修正工事の問い合わせや依頼が後を絶ちませんでした。

特に東京湾を埋め立てて海沿いに高級住宅地を造成した新浦安エリアでは、大規模な液状化現象による被害が街の様子を一変させてしまったことを今でもよく覚えています。

マンションは杭が打ってあるので建物が傾いてしまうことはなかったものの、周辺の地盤が沈下してしまったために建物とは50cm以上の段差が生じて、給排水管やガス管は使用不能となりました。
そのためトイレも使用することができず、マンションの敷地内には数多くの仮設トイレが設置されました。

震災で傾いた交番

震災で傾いた交番

被災した駅前の建築物

被災した駅前の建築物
周辺の地盤と著しい段差が生じています。

こうした自然災害による被害をできるだけ避けるためには、地盤について最低限の知識をつけておくことが大切です。
そこで今回は、地盤について紹介したいと思います。

地盤調査とは

地盤調査とは、対象の土地が建物を建てる上で相応しい土地であるかどうかを事前に調査するもので、代表的なものにはボーリング調査、スウェーデン式サウンディング試験、平板載荷試験などがあります。
調査の結果によっては、そのままでは家を建てることができず、地盤改良や杭工事が必要になります。

そして現在は一部の例外を除いて、住宅を新たに建てる場合には地盤調査を行うことが欠かせないこととなっています。

住宅を建築する会社には、住宅の基礎、柱、屋根などの主要構造部分に対して10年間の「瑕疵担保責任」を負うことが法令で義務付けられています。
そして住宅会社が瑕疵担保責任をしっかりと果たせるようにするために、「住宅瑕疵担保履行法」という法律があります。(2009年10月1日以降引き渡し物件に適用)
住宅を新築する会社は、保険などで責任を果たすだけの資金力を確保しなければならないというものです。
そして住宅を建築する会社がその保険に加入するためには、地盤調査が必須となっています。
結果として住宅を新築する際には、事前に地盤調査を行うことが欠かせなくなったといえます。

中古住宅を購入する場合にはどうすれば良いの?

ここで問題となるのは、中古住宅を購入する場合にはどうすれば良いのかという点です。
築年数が浅いものであれば新築時に地盤調査を行っていますが、2009年9月末日以前に建てられた住宅の場合は地盤調査を行っていないことがあり、古い建物になるほどその傾向が大きくなります。

その場合には、近隣での地盤調査のデータがないか役所や地盤調査会社などに確認したり、インターネットで調べたりする方法があります。


しかし最も確実な方法は、実際に建物が建っているので建物や外構などに軟弱地盤を示す事象が発生していないことを確認することです。

基礎や外壁、ブロック塀などに大きなひび割れが発生していないか、外部の土間コンクリートに段差やひび割れがないか、建物に傾きが生じていないか、室内のサッシや建具に建付け不良な箇所が多くないか、床下にひび割れや陥没が生じていないか等を調べることで、地盤の強さを推測することができます。

また近くに河川や池、沼などがあると、その地域の地盤は強くないことが多いといえます。
土地勘のないエリアの中古住宅を購入する場合には、地図を見て購入を再度検討してみると良いでしょう。
さらに傾斜地を造成して宅地にしている場合にも注意が必要です。
傾斜地を平らにするために盛り土している部分はどうしても地盤が悪くなりがちなので、その土地が盛り土なのかどうかを売り主や不動産仲介業者などに確認しておきましょう。

床下の地盤が陥没している事例

ホームインスペクションで確認された床下の地盤が陥没している事例
地盤沈下の疑いがあります

また地名に川、河、江、洲、浜、潮、池、沢、岸、瀬などの「水に関連する文字」や、窪(久保)、谷、低、下などの「低地を表す文字」が入っている場合には、軟弱地盤である可能性が高いといわれています。
中古住宅を購入する際の大まかな目安にはなるでしょう。

したがってこれらの地域に建つ中古住宅を購入しようとする場合には、地盤改良工事の有無や近隣の新築工事の様子などをできる限り確認しておくことをおすすめします。
しかし地盤改良を行っていても建物が傾いてしまっていることもあるので、必ずしも安心とはいえません。
中古住宅を購入する前には、専門家によるホームインスペクションを行っておくと安心です。

専門家が基礎や外壁のひび割れの有無の確認や、建物や床の傾きの調査、床下や屋根裏の調査等を行うので、建物の現在の状況を正確に把握することができます。

専門家によるホームインスペクションについてはこちら

『かめだの部屋』住宅診断士・ホームインスペクター 亀田