ホームインスペクションと雨漏り調査

ホームインスペクションってなにをするの?

住宅診断の目的は多岐にわたります。
建物の劣化状況を調べたり、特定の不具合の原因を探ったり、施工不良の有無を調べたり、時にはリフォーム前の調査を行なったりとその目的は様々です。
その中で主に目視で住宅のコンディションを調査して依頼主に報告する業務のことを「ホームインスペクション」といいます。

比較的短時間(3時間~3時間半程度)で可能な範囲の調査を行う「健康診断」のレベルですが、それでも時には重大な不具合が発見されることがあります。
その代表的な不具合の例のひとつに「雨漏り」があります。

今回は、ホームインスペクションと雨漏り調査について紹介します。

ホームインスペクションで見つかる雨漏り事例

雨漏りは比較的築年数が浅い家でも発生することがあります(新築住宅でも施工不良により発生することがあります)が、やはり築年数が経過するほど発生リスクが高まります。

中古住宅の雨漏りは、メンテナンスや定期的な点検の不備などが大きな原因といえますが、突風や強風を受けやすい立地、台風や大雪などの被害に見舞われやすい気候などの場合にも発生しやすいといえます。

そして中には新築当時から「雨漏りのリスクが高い家」も存在します。
近年では人気の高い軒の出の少ない家や、雨戸やシャッター、窓上の庇などがない家などでは、どうしても外壁面に雨水が直接当たりやすくなるので、サッシ周りや外壁から雨漏りするリスクが高くなってしまいます。

住宅の雨漏りは実は屋根からよりも、外壁やサッシ廻り、バルコニー廻り、各部の取り合い部分などから雨水が侵入して発生することが多いのです。
そして屋根からの雨漏りは比較的原因究明がしやすいのに対して、外壁やバルコニー廻りからの雨漏りは原因を究明するのにも時間がかかることが多いといえます。

ホームインスペクションでは、屋根裏の状態を目視で確認したり、軒裏や室内の天井、壁に水染み跡がないかどうかを確認したりしますが、その際に雨漏りが発覚することが時々あります。

しかしホームインスペクションでは雨漏りの有無は確認することができても、調査時間が限られていてかつ非破壊での調査なので、雨漏りの原因や雨水の侵入経路、具体的な修繕方法などを明示することはできません。

【ホームインスペクションの際に屋根裏で見つかった雨漏り跡】

上記の事例は、屋根裏の断熱材の上に大量の雨水が溜まっているにもかかわらず、室内には雨漏りしていなかった珍しいケースです。
ホームインスペクションを行っていなければ発見することができませんでした。

アフリスペック住宅診断 築5年程の勾配天井に見られた水染み跡

【築5年ほどの住宅の勾配天井に見られた水染み跡】


雨漏りの可能性が高いと思われます。
比較的築年数が浅い建物でも、施工不良などが原因で雨漏りが発生することがあります。

雨漏り調査の方法

ホームインスペクションが雨漏りの形跡がないかどうかを目視で確認する「一次診断」だとすると、雨漏りの原因を究明する雨漏り調査は「二次診断」に相当します。

そして目視調査で雨漏りの形跡が確認された場合の雨漏りの原因調査には、主に次の3つの方法があります。

・散水調査
雨水の侵入が疑われる箇所に直接ホースや高圧洗浄機などで水をかけて、雨漏りを再現しようとするものです。
しかしその日の風向きや水の強さによっては、長時間散水し続けても雨漏りが再現できないことがあり、長く水をかけ続けること(1時間以上散水し続けることもあります)で、水道料金の負担が増えてしまう場合があります。
また調査を行う人の経験や知識によって調査結果に差が出ることが多く、状況によっては足場や高所作業車が必要になったり、天井や壁を一部解体することが必要になったりします。
散水試験によって雨水の侵入経路が確定できれば、余分な調査費用や補修工事費用を減らすことができます。
費用は約3~5万円程度です。

・赤外線サーモグラフィ調査
赤外線カメラ(サーモグラフィ)で雨漏りが疑われる周辺部分を撮影することで、表面温度の温度差により雨水の侵入箇所を推測する方法です。
青色に見える箇所が周りよりも温度が低い箇所になるので、雨水が伝わった経路と推測されます。
しかしこれはあくまでも仮説なので、雨水の侵入口を確定するためには、散水調査と併せて行う必要があります。
費用は10~20万円程度です。

・発光液による調査
雨水の侵入口であろうと疑われる箇所に、蛍光塗料を混ぜた試験水を流し込むことで雨水の侵入経路を特定しようとするものです。
暗い天井裏や壁の内部であっても、試験水にライトを当てることで色別に発光して雨水の侵入口が推測できます。
たとえば疑わしい箇所が複数ある場合には、それぞれの箇所に違う色の発光液を流し込むことにより、雨水の侵入箇所を特定することができるようになります。
木造住宅よりも鉄筋コンクリート造の住宅で採用されることが多く、試験水は数日で色が消えるので、建材の変色などは発生しません。
費用は5~20万円程度です。

他に、屋根などの高所部分で目視できない箇所を、足場を掛けずにドローンにより写真撮影して調査する方法があります。

それぞれの調査方法は建物の構造や条件などによって向き・不向きがあるので、どれがいいとは一概にはいえませんが、それ以上に雨漏り調査を行う業者をしっかりと選ぶことが大切です。
ホームインスペクターの中にも雨漏り調査に精通している人がいるので、まずは「一次診断」を行った人に相談してみると良いでしょう。

専門家によるホームインスペクションについてはこちら

『かめだの部屋』住宅診断士・ホームインスペクター 亀田