賃貸用の中古物件こそ物件購入前にホームインスペクションを!

アパートなどの収益用物件を購入する際には自己居住用の物件を購入するのと異なる点が多く、万が一購入後の建物に想定外の不具合が発生してしまった場合には、当初予定していた利回りを大きく下回ってしまうリスクがあります。

こうなってしまうと購入したことを必ず後悔することになります。

特にオーナーチェンジ物件は賃借人が居住している状態で売買するため、買主が売買契約前に室内の状態を確認できないことが自己居住用物件の売買との大きな違いになります。

また収益用物件は自己居住用物件と比較して、施工中の品質管理が甘くなる傾向があります。

施主自らが居住する訳ではないので、毎月の家賃収入さえきちんと得られれば良いという施主が多く、施工会社に任せっきりで工事中の施主検査などが一切行われないことも少なくありません。

したがって投資家の中にはインスペクションが現在のように普及する前から、賃貸用の中古物件を購入する際には必ず専門家に建物の調査・診断を依頼していたという方が少なくありません。

実際にアパートの建築請負を行っている大手不動産会社L社の小屋裏の界壁施工不良問題や、八王子で起きたアパートの屋外階段の崩落事故などは記憶に新しいところで、いずれも施工会社による杜撰な工事や品質管理の甘さが露呈したカタチとなっています。

収益用中古物件の床下の様子
収益用中古物件の床下の様子

床下の整地が雑(一部土が山積みになっている箇所あり)で防湿シートはめくれあがっており、防湿の役割を一切果たしていません。

収益用物件ではこのような雑な施工が決して珍しくありません。

そして目につきにくい部分に不具合が多く見られる場合には、他にも大きな欠陥が隠れていることが多いので注意が必要です。

これらのリスクを完全になくすことはできませんが、購入前にインスペクションを行っておくことでリスクを最小限に抑えることは可能です。

そこで本記事では収益用中古物件のインスペクションとその際に注意すべき点について紹介します。

収益用中古物件のリスク

収益用中古物件(アパート等)購入のリスクには次のようなものがあります。

・施工不良や著しい劣化、住宅設備機器の故障、水漏れ、雨漏りなどを原因とする入居者からのクレーム

・補修工事、メンテナンス等の想定外の支出により予定していた利回りを下回るリスク

・不動産仲介業者や売主とのトラブル

・空室率アップ

いずれも決して好ましいものではなく、全ては一連の流れから発生するものと

いえます。

収益用中古物件のインスペクションを行う際の注意点

前述したリスクをできるだけ排除するためには、物件購入前のインスペクションが欠かせません。

しかし収益用中古物件は基本的に賃借人が入居している状況なので、インスペクションを行う際には居住者への配慮が必要になります。

インスペクションを実施する日時が決まり次第、それをあらかじめ入居者全員に知らせておかなければトラブル発生の原因になってしまうことがあります。

告知の方法については、管理している不動産会社と相談の上決めましょう。

また入居者がいる部屋の内部には立ち入ることができませんが、どうしても室内を確認する必要があるのであれば、事前に立ち入りの許可をもらっておかなければなりません。

しかしこれは実際にはかなりハードルが高いので、空室になっている部屋のみ室内の調査を行うことになります。

したがって満室の場合には室内の調査はできないと思った方が良いでしょう。

そして空室がある場合には、1階であれば床下の調査を、最上階であれば小屋裏の調査を併せて行っておくことをおすすめします。(ただし点検口があることが条件になります)

小屋裏の調査を行うことができれば、小屋裏の界壁の状態を確認することも可能です。

アパートの小屋裏界壁の施工不良はL社以外でも時々あることなので、物件を購入する前に是非確認しておきたいところです。

そして投資物件の中には、売主側ですでにインスペクションが行われていることがあります。

しかしその場合には、報告書に売主が有利になる報告事項ばかりが記載されていたり、調査が行われた日時が1年以上前だったりすることもあるので注意が必要です。

収益用物件のインスペクションの費用

収益用物件(居住用)のインスペクションにかかる費用は、建物の延べ床面積や階数、構造、室内の調査が可能な世帯数などによって異なりますが、木造の2階建アパートで延べ床面積が120㎡、4世帯程度であれば共用廊下や階段を含めて12~15万円前後になるでしょう。

詳しくはホームインスペクションを行っている会社にお問い合わせください。

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かめだの部屋 住宅診断士 亀田 融