セルフインスペクションのやり方
中古物件の売主から専門家によるホームインスペクションを行うことを拒否されてしまった場合や、スケジュールの関係から専門家にインスペクションを依頼できない場合には、物件内覧の際に自分でできる範囲で不具合の有無をチェックしなければなりません。
この記事では、そのような場合に内見時に持参すべきものや自分で確認すべきポイントなどを紹介します。
中古住宅の内見時に持参すべきもの
一般の方がご自身で住宅の診断を行うことはほぼ不可能に近いといえます。
住宅診断を業とするホームインスペクター(住宅診断士)は、幅広い専門知識や過去に数多くの建物を見てきた経験を元に診断業務を行っているからです。
しかし不具合の原因や種類を判別することはできなくても、購入の可否を判断する上で重要になる、ある程度の不具合の有無をチェックすることは可能です。
ただしそのためには、内見時に持参すべきものがあります。
中古住宅を内見してセルフインスペクションを行う際には、最低限次のものを持参するようにしましょう。
物件の間取り図
図面(間取り図)は現地で気付いた点や各所を計測した数値をメモしておくために必要になります。
基本的には不動産業者に依頼しておいて現地で受け取るようにしますが、内見前にすでに受け取っている場合は忘れずに持参しましょう。
筆記用具
3色ボールペンなどがあると何かと重宝します。
長さ3m以上のスケール
スケールは内見する際の必需品です。
現地確認で気になった点を計測しておくだけでなく、室内の寸法や窓の大きさなどを測ってメモしておくと、家具や家電の配置を考えたりカーテンなどを購入したりする際に役に立ちます。
方位磁石
方位は物件の販売図面にも記載されていますが、日当たりを重視するのであれば実際に現地で方位を確認しておきましょう。
スマートフォンのアプリを活用する方法もあります。
スマートフォン、デジカメ
記憶は時間が経つと曖昧になってしまうものです。
主要な部分や気になる部分は、写真や動画を撮って残しておくと安心です。
尚、売主が居住している場合には、撮影する前に売主の許可を得るようにしましょう。
チェックシート
当日のチェック漏れをなくすために事前に気になる部分をチェックシートにまとめておき、現地に持参するようにしましょう。
その他水平器(スマホのアプリでも可)やビー玉などがあると役に立ちます。
セルフインスペクションのやり方
次にセルフインスペクションのやり方を紹介します。
内見時にはまずは立地や周辺環境、部屋の向き、日当たりなどを確認します。
部屋の向きや日当たりなどは物件を購入後にリフォームしても容易に改善することはできないので、事前に良く確認しておきましょう。
次に風通しや騒音、眺望などをチェックします。
風通しを良くするためには窓の数や大きさ、位置などが非常に重要です。
また風通しが悪いと湿気がこもって不快になるばかりでなく、家が傷みやすくなってしまうので注意が必要です。
内見の際には必ず窓を開けて風通しを確認すると共に、外部の騒音や窓からの眺望、隣家との距離なども忘れずにチェックしておきましょう。
ここまでひと通りチェックしたら、いよいよセルフインスペクションを行います。
セルフインスペクションの項目は以下の通りです。
1.外壁・基礎
外壁や基礎にひび割れ(クラック)が発生していないかどうかをチェックします。
外壁のひび割れは雨漏りの原因になったり、基礎のひび割れは不同沈下を起こしていたりする可能性があります。
著しいひび割れが数多く見られる場合には注意が必要です。
2.屋根や軒裏
屋根については瓦などの屋根材のズレや破損、軒裏については水染み跡や塗装の剥がれなどがないかどうかを確認しておきましょう。
雨漏りの原因になる部分なので、確認できる範囲で良いのでしっかりとチェックしておくことが大切です。
3.バルコニーの防水
バルコニーの防水層に浮きや剥がれ、破れが見られる場合には雨漏りの原因になるので、忘れずにチェックしておきましょう。
4.室内の臭いや汚れ
臭いは実際に現地で確認しなければわかりません。
特に空室物件で室内にカビ臭さや異臭が発生していたら、湿気で建物が傷んでいたりシロアリ被害を受けていたりする可能性があります。
またタバコのヤニの臭いやペットの臭いは簡単には除去できないので要注意です。
さらに居室の天井や壁に染みがある場合には、雨漏りしている可能性があります。
5.漏水の有無
給水管が水漏れしているかどうかは、水道メーターで確認することができます。
家にある全ての蛇口(外水道を含む)を閉めて、水道メーターのパイロット(小さなコマ状のもの)が動いていたら、どこかで水漏れしていることがわかります。
6.床や柱の傾き
床が水平かどうかは、スリッパを履かずに室内を歩いてみると気付きやすくなります。
またビー玉を転がしてみたり、水平器を当てて確認したりする方法もあります。
しかし傾きが発生するのにはさまざまな原因があるので、たとえ傾きが生じていても一概に不同沈下が原因とは限りません。
7.点検口の有無の確認
天井点検口や床下点検口がないと、床下や小屋裏の様子を点検することができません。
したがって今後のメンテナンスに支障をきたすばかりでなく、今までもメンテナンスが行き届いていなかった恐れがあります。
したがって点検口の有無は忘れずにチェックしておきましょう。
まとめ
何らかの事情で専門家によるホームインスペクションを行うことができない場合には、上記の方法で最低限の調査を行うことができます。
マイホームの購入は多くの方にとって人生最大の買い物になるので、しっかりと確認してから購入判断をして欲しいと思います。
専門家によるホームインスペクションについてはこちら
かめだの部屋 住宅診断士 亀田 融