築浅の住宅に良く見られる新築時からの施工不良

築浅の中古住宅を購入しようとしている方の中には、「まだ新しいので経年劣化が生じているはずがなく、特に専門家に建物診断を依頼しなくても問題はないだろう」と安心していることが多いようです。

確かに雨漏りや水漏れ、シロアリ被害などの重大な不具合、経年劣化などが発生しているリスクは低いとしても、断熱性能や耐震強度に影響を及ぼしかねない不具合が存在していることがあります。

そしてそれらの不具合があったとしても、売り主様はそれを知らずに住んでいることがほとんどです。

そこでこの記事では、床下や屋根裏のインスペクションを行った際に見つかった築浅物件(築5年前後)の代表的な不具合事例をいくつか紹介します。

新築当時からあったと思われる築浅物件の不具合事例(床下編)

築年数の浅い物件でも床下や小屋裏の調査を行うと、新築当時からのものと思われる不具合が見つかることが少なくありません。
そしてその多くが検査をきちんと行っていれば防げたものですが、残念ながら工事中や完成後の検査等で見落とされ、そのまま引き渡されてしまったケースがほとんどといえます。

中でも床下の断熱材の施工忘れは発生頻度が高い項目で、私が過去に調査を行った築浅物件の半数近くで見られました。
特に高断熱性能をアピールしている住宅ほど僅かの隙間でも床下の外気が室内に侵入して建物の断熱性能が低下してしまうので、決して見逃すことができない不具合といえます。

【床下の断熱材の施工忘れ(丸の部分)】
【床下の断熱材の施工忘れ2】

床下の断熱材の施工不良は、特に床下点検口の周囲で多く見られます。

点検口の穴は床組み後に開けることが多いので、断熱材を一度撤去して点検口の穴を開けた後で戻さなかったことが原因と思われます。

他に床下の断熱材が何らかの理由で落下してしまっていたり、垂れ下がって隙間が生じていたりすることもあります。

そして次に多いのが床組みを支えている鋼製束のビスや釘などが正しく施工されていないケースや、ナットの締め付け不良のケースです。

【床下のL型鋼製束の取り付け不良】

本来は側面2本、底面4本のビスで留め付ける様になっていますが、底面がビスで固定されていませんでした。

この現場ではこのような箇所が数多く見られました。

鋼製束を仮止めしたままビス止めするのを忘れてしまった可能性があります。

また鋼製束のナットの締め忘れは床鳴りの原因にもなるので注意が必要です。

新築当時からあったと思われる築浅物件の不具合事例(屋根裏編)

築浅物件の屋根裏でもグラスウール断熱材の隙間(雑な施工)や設置忘れのほかに、構造金物のナットの締め忘れ、取り付け不良などの不具合が見つかることがあります

【接合金物の締め付け忘れ】

接合金物の締め付け不良は築浅の住宅でも時々見られ、建物の構造耐力に関わる重要な不具合のひとつといえます。

このような金物は木造住宅には数多く存在するので、必ずしも手抜き工事とはいえなくても大工が締め忘れてしまうことがあります。

【筋交い接合金物のビスの打ち忘れ】

以前にも紹介しましたが、筋交い接合金物の横架材(梁)側のビスを打ち忘れてしまった事例です。

接合金物とは木造の建物の継手や仕口部など、部材どうしの接合部の緊結や補強のために用いられる金物で、留め付ける釘やビスの種類、長さ、本数などが製造メーカーから指定されています。

そして写真の場合には、梁側は4本の専用のビスで留め付けることになっています。

しかしこのような規定が守られていないと接合部の強度が低下して、地震などの外力を受けた際には脱落してしまう危険性があります。

したがって写真の事例では建物の耐震強度の低下が懸念されるので、こうした不具合が数多く見られる場合には購入を再検討する必要があるといえます。

これらの不具合事例は決して特殊なケースではありません。

ほかにも様々な築浅住宅の不具合事例がありますが、この記事では紙面の都合で代表的なもの(よく見かけるもの)に絞って紹介しました。

本来、こうした不具合は新築時の検査で指摘され、引き渡し時にはきちんと是正されるべき項目ですが、建築現場での人手不足や熟練工の不足、新たな技術や施工方法の登場などによって、不具合の見落としや誤った施工が行われる危険性が今後益々高まることが予想されます。

したがって築浅だからという理由で、住宅を購入する前にホームインスペクションを行う必要がないとは決していえません。

安心して住宅を購入するためにも、是非ホームインスペクションをご活用ください。

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かめだの部屋 住宅診断士 亀田 融