購入をおすすめできない中古住宅とは?

私が所属している日本ホームインスペクターズ協会では倫理行動規定が定められており、その第3条には「中立性の維持」として「不動産売買の意思決定に関して、顧客を誘導してはならない」という条文があります。

すなわちホームインスペクションを行った物件に対して、物件購入の可否の判断について言及することは原則として行わないこととなっています。(購入して良いかどうかの助言はしない)

それは物件に対する価値の判断基準(何を重視するのか)は、人によって異なるためです。

しかし土地の価値は別として、建物の価値としてはあまり購入することをおすすめできない物件も確実に存在しているので、ホームインスペクターに対して建物に関する専門的な立場からの助言を期待している方は決して少なくありません。

購入することをおすすめできない中古住宅の不具合事例

利便性の高さや周辺環境の良さなど土地に魅力を感じて中古住宅を購入するのであれば別ですが、ホームインスペクションを行って建物に以下の不具合が発見された場合には購入を即決すべき物件とはいえません。

(そもそもホームインスペクションを行なう場合は、購入後にも建物を使用することを前提としていることがほとんどです)

  1. 雨漏りしている又は雨漏りの形跡が多数見られるもの
  2. 構造躯体の腐蝕や著しいシロアリの食害が認められるもの
  3. 基礎や外壁に幅0.5mm以上のひび割れが数多くある又はひび割れが集中して発生している箇所があるもの(不同沈下の疑い)
  4. 床や壁・柱に6/1,000以上の傾きがあるもの(不同沈下の疑い)
  5. 床下や天井裏で水漏れしている又は水漏れの形跡が認められるもの
  6. 床下に水が溜まっている又は床下に著しい湿気がこもっているもの
  7. 室内に著しいカビが発生している又は室内がカビ臭いもの
  8. 著しい施工不良が数多く見られるもの
2階の部屋に見られる天井の水染み跡
2階の部屋に見られる天井の水染み跡

雨漏りの形跡と思われます。
この物件では雨漏りが原因と思われる水染み跡がほかの部屋や屋根裏にも多数見られました。

中古住宅のホームインスペクションを行うと何らかの不具合が発見されるケースがほとんどですが、その傾向は築年数が経過している物件ほど顕著になります。
そのため些細な不具合まで気にしていたらなかなか中古物件を購入することはできませんが、重大な不具合が見つかった場合には慎重に行動することが大切です。

しかしここですぐに購入を断念してしまうのは、いささか早計の様に思われます。
立地条件や価格、建物のデザイン、面積、間取りの使い勝手などが気に入った物件であれば尚更です。
中には現在では入手することが困難な木材や銘木を使用して丁寧に建てられた歴史的価値の高い建物もあります。

一方、ホームインスペクションは限られた時間を使って目視調査で行うのが原則なので、場合によってはより詳細な二次診断が必要になることもあります。
また上記の不具合が認められる場合であってもその原因が明らかであれば、比較的少額な費用で修繕できることもあります。
そして築年数が古い物件はほぼ土地の値段だけで売りに出されていることも少なくないので、少額で修繕が可能であれば一概に購入してはいけないとはいえません。

しかしホームインスペクターから購入の可否のアドバイスが受けられないとしたら、自分ではどのように判断すれば良いのでしょうか。

中古住宅の購入可否の判断に迷ったら、修繕費用を聞いてみることが大切!

物件購入の可否の判断に迷った時には、まずは住宅診断を行ったホームインスペクターに「どれくらいの費用で不具合の修繕が可能なのか?」を訊ねてみることをおすすめします。

過去にリフォームや改修工事の施工管理、設計監理を行った経験が豊富なインスペクターであれば、その場でおおまかな修繕費用を提示してもらうことができるでしょう。

中古住宅の購入で失敗してしまうのは購入後に想定外の欠陥が見つかったり、思っていた以上の高額な修繕費用がかかってしまったりするといったケースがほとんどです。

「購入前にわかっていれば・・・」と後悔しないためにも、単に不具合があるかどうかということだけでなく、不具合の修繕費用についても購入の判断基準にすることが大切です。

依頼者がホームインスペクションを依頼することで得られるメリットは、単に不具合の有無を調査してもらうことだけではありません。

調査結果を物件の購入判断や購入後の修繕・改修・メンテナンスの参考に活用できることなので、少しでも疑問点がある場合には、積極的に問いかけてみることが大切です。

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かめだの部屋 住宅診断士 亀田 融