【必読!絶対に読んで欲しい】新築住宅10年保証の落とし穴。
新築住宅購入時には10年間の保証が義務になっています。
この制度は、住宅品質確保の促進等に関するする法律(以下:品確法)の規程により請負人側が責任を負わなければならないとされています。
構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分については保証する義務が請負者に課されているということです。これから住宅を購入したり、新築を考えている方にはとても安心な制度ですね。
しかしその実態はどうなのでしょうか?
その保証を担保するために建設会社は保険法人の検査を受け、万が一の場合にはその保証でお客様の対応をするのが一般的ですが、ここに落とし穴がありました。
ちょっと長いですが10年後に後悔しないためぜひお読みください。
※請負人が保証会社の保証を受けていることを前提としてお話します。
外壁がめくれあがっているのに瑕疵にならない?
これは実際にあった事例です。
下記写真をご覧ください。
いかがでしょうか?
横からは水が入りたい放題です。
築9年のこの住宅で起きた事例です。
アフリスペックの調査によると、原因は施工不良。
いくつもの不具合が散見され、それらが総合的に引き起こした事象です。
※今回の論点は不具合の内容ではなく、保証についてなので、また別の機会にご紹介をしたいと思います。
これは雨水の浸入を防止する部分に関する保証対象ではない…と請負者に言われた事例です。
雨水の浸入を防止する部分とは?
そもそも雨水の浸入を防止する部分ってどこなの?
これらについては以下の条文に定められています。
■品確法施行令5条2項
1.住宅の屋根若しくは外壁又はこれらの開口部に設ける戸、わくその他の建具
2.雨水を排除するための住宅に設ける排水管のうち、当該住宅の屋根若しくは外壁の内部又は屋内にある部分。
この部分はどういった保証をうけられるの?
それは以下の条文にこう定められています。
■品確法第94条
住宅を新築する建設工事の請負契約においては請負人は、注文者に引き渡した時から10年間、住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものの瑕疵(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く)について、担保の責任を負う。(一部要約)
なにを言っているのかわかりますでしょうか?
お客様の立場からすると、令5条2項の範囲について、品確法第94条の保証が受けられるということです。
ここまでは安心感がありますよね。
そして新築時にはこれがハウスメーカーの売り文句になっていることも多くあります。
『新築で10年保証がついているから安心ですよ!万が一ウチが倒産しても保証会社の保証が受けられるので安心です。世の中、何があるかわかりませんからね!』
予想もしない落とし穴
しかし、この事例については落とし穴がありました。
こんな風に言われてしまったのです…。
保険会社→実際に雨が漏れていることが確認出来なければ保証の対象にならない
請負人(工務店)→ 不具合ではなく経年劣化。
たった9年の経年劣化でこうなるのであれば、サイディングは売り物になりません。そして見えないところで発生している雨漏りこそ構造のリスクが高いはずです。
とは言うものの、こういわれてしまったらお客様はどのような動きをしなければならないのでしょうか?
1.雨漏りしているということを証明しなければならない。
2.経年劣化ではないことを証明しなければならない。
これって建築が分からない消費者にとってどれだけ大変なことかわかりますでしょうか?
この建物の場合、内部の断熱材にはウレタンが吹かれていました。
屋根についても同様です。
ウレタンが吹かれていると雨漏りが分かりにくく、発見が遅れます。
湿っていると思われる木部は内側からでは確認できず、外側の外壁をはがさなければなりません。
調査費用はどうするの?
もちろんお客様持ちです。
雨が漏れていなかったら?
何もしません。
親切な会社なら良いのですが、そうでない会社なら出来れば保証をしたくないという考え方が働くようです。
新築時の売り文句は何処へやら…。
築9年のこの住宅では請負者は保証期限をチラつかせてお客様に迫ります。
それなら保証会社に直接請求すれば?
この保証義務は請負者に課されるものです。
万が一、請負者が倒産してしまった場合などには保証会社に直接保証を求めることが出来ます。
つまり倒産していなければ保証するもしないも工務店次第ということです。
お客様にとっては工務店が残っていたがために保証が受けられない…という皮肉な結果です。
本当に雨漏りを証明しなければならないのか?
しかし、本当に雨漏りを証明しなければ保証の対象とならないのでしょうか?
先ほどの条文をよく読むとこう書いてあります。
■品確法第94条(抜粋:一部要約)
住宅を新築する建設工事の請負契約においては請負人は、注文者に引き渡した時から10年間、住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものの瑕疵(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く)について、担保の責任を負う。
雨水の浸入に影響のないものを除く…
つまり『雨水の浸入に影響があるものを含む』ということです。
雨水の浸入に影響がある状態とは?
現在の住宅は主に外壁通気工法(通気胴縁工法)が採用されています。
これは外壁部分の内側に通気層があり、透湿防水シートが張られている工法で、現在では最もポピュラーな工法と言っていいでしょう。
これが採用される理由としては、外壁内部の結露等の問題が建物の劣化に繋がる等が理由のひとつですが、その構造は外側に面するサイディング(1次防水)と構造躯体の防水部分(2次防水)に分けて考えられます。
一次防水…サイディング
二次防水…透湿防水シート
これらが一体となって働き、お互いの性能を補完しながら雨水の浸入を防ぐ構造のなっています。
部材毎に見ていくとその役割が分かる
部材単体で見ていきましょう。
サイディングは完全防水ではありません。これだけで防水層を形成しようとしても無理です。サイディングのジョイント部分等から強雨や強風時等には水が内部に浸入します。その微量な雨水を透湿防水シートが防いでいるのです。
一方で透湿防水シートについてはどうでしょう?
これらも完全防水ではありません。それなりの水圧に耐えられる製品となっていますが、これが外部に露出した状態(紫外線を受ける状態)の場合にはその製品自体の劣化が進行し、本来の防水性能が発揮されません。
サイディングは透湿防水シートに頼って最終的な雨水の浸入を防いでいます。
透湿防水シートはサイディングによって紫外線劣化から守られています。
これらがお互いに補完し合いながら機能するから外壁通気工法が成立しているのです。
これら一次防水と二次防水、どちらかが機能しなくなった時には、少なくとも雨水の浸入に影響がないとは言えないと思います。
つまり、『雨水の浸入に影響がない部分として、除外される状態ではない』ということ考えます。
結論
さて話を戻します。
それらのどちらかに不具合が発生した場合にも雨水の浸入に影響がないものと言えるのでしょうか?
結論は…出ていません。
しかし雨水の浸入に影響がないとは言い切れない状況であることには違いないと考えます。
グレーゾーンです。
これから新築住宅を購入・新築する方は保証の内容やその適用条件について注意しておきましょう。
保険の運用も含めて消費者に安心な制度になるように期待をします。