無垢材住宅と言われて家を建てたら・・・。そもそも無垢材住宅とはどんな家?
私たちホームインスペクターは、インスペクション(住宅診断)の依頼ばかりでなく、購入した(建築した)住宅に関する相談を受けることがあります。
以前、「無垢材住宅」というセールスポイントに魅かれて家を建てた方から、一部に集成材が使われていることに不信感を持ったということで相談を受けたことがありました。
無垢材とは合板や集成材のように人工的に加工された材料ではなく、丸太から切り出した天然の木材のことをいいます。
天然木本来の風合いが感じられると共に接着剤などの化学物質を使用しないので、近年の健康への意識の高まりから注目を集めるようになりました。
無垢材の利点には、木の良い香りがする上に冬は暖かくて足触りが良いこと、調湿性に優れていること、シックハウスになりにくいこと・・・などがあります。
では「無垢材住宅」とはどんな家のことをいうのでしょうか?
無垢材住宅とは?
一般的には天然木をメインに使用した住宅のことを「無垢材住宅」といいますが、はっきりとした定義があるわけではないようです。
そのため完成した無垢材住宅の一部に集成材が使われていたので建主がそれを業者に指摘すると、「木材のすべてに無垢材を使用するものではない」、「図面通りに施工しているので契約違反ではない」と反論されてしまったそうです。
確かに建主と一緒に設計図書を良く確認すると、主要な構造材などは無垢材になっているものの、床柱の絞り丸太や2階のフローリングのほか、下地材の一部も集成材と表記されていました。
こうしたことが起こるのも無垢材には前述したように多くのメリットがある反面で、デメリットも存在するからです。
無垢材のデメリット
無垢材のデメリットは品質にバラツキが多く(個体差が大きい)、乾燥収縮で割れや反り、捻じれなどの狂いが生じる、断面の大きなものがとりにくい、そして何よりも値段が高い、といったことが挙げられます。
時々YouTubeなどの動画でも話題になっている梁のひび割れや接合部の隙間などは、材料を良く乾燥させずに生乾きの状態で使用したことが原因であることがほとんどです。
一方、集成材は割れ、反り、収縮などの狂いが生じにくく品質が安定しているので、住宅会社や大工が扱いやすいといえます。
そのためたとえ無垢材住宅を売り物にしている住宅会社であっても、木材の狂いや予算の問題から、下地材や下地合板、床柱、断面の大きな化粧梁などには無垢材を使用しないケースが割と多いように思います。
無垢材住宅を建てる際の注意点
無垢材住宅を希望している人の多くは昔ながらの家をイメージしている人が多く、完成後に多少の狂いやひび割れなどが生じることを承知していることがほとんどだと思います。
また集成材の寿命は一般的に50~70年程度といわれているのに対して、無垢材の寿命は優に100年は超えます。
木材は伐採されてから150年~200年程度をかけて強度が増していくといわれ、桧は伐採後約2000年、杉は500~600年、松やケヤキでさえも400年程度の耐久性があるといわれているほどです。
実際に奈良時代に建設された法隆寺金堂が無垢の木を用いて建てた「世界最古の木造建築物」と呼ばれていて、693年には建てられていたということなので、築年数は1300年以上になります。
しかし「無垢材の家」をどう定義するのかは人によってさまざまではないでしょうか。
昔のように竹で木舞を編んで土を練って土壁の下地を作るなどということは現在ではほとんどなく、石膏ボードの壁に変わりました。
床の下地も合板を使用するのが一般的です。
そして断熱材にしても工業製品を使用しないのであれば、何を使えば良いのかわからないというのが現実です。
無垢材住宅のほかにも天然素材住宅、自然素材住宅などと呼ばれているものでもこうしたところは曖昧なことが多く、トラブルの原因になっています。
しかし近年では、工業製品を一切使用しない住まいづくりは現実的ではありません。
「無垢材住宅」には特に定義があるわけではないので、これから無垢材住宅や自然素材住宅を建てるのであれば、どこまで無垢材や自然素材にこだわるのかを事前によく考えて、施工業者を選定することが大切です。
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かめだの部屋 住宅診断士 亀田 融