木造住宅の耐震性は築何年までなら安心か?古い木造住宅の耐震性を向上させる方法
地震に耐えられる建物にはどんな基準がある?
トルコ南西部で2023年2月6日(現地時間)に発生したマグニチュード7.8の巨大地震では、6,000棟以上の建物が倒壊したことが確認されています。(2月10日時点)
そして被災した住宅の半数以上は2000年以前に竣工した建物と思われ、日本でいう新耐震基準に相当する基準が導入される以前の、古い耐震基準に基づいて建てられた建築物だそうです。
地震などの自然災害が数多く発生している我が国の住宅においても、集中豪雨や台風に対する対策と共に、地震対策は欠かすことができないものです。
そこで既存建物の耐震性能を判断するモノサシのひとつとして、耐震診断があります。
耐震診断とは?
耐震診断報告書の例(耐震診断ソフト『ホームズ君』インテグラル)
国内の木造住宅は、新耐震基準(昭和56年基準)で建てられていたとしても実際に耐震診断を行うと、その7割以上が「倒壊する可能性が高い」ため耐震補強を要すると診断されます。
耐震診断では、現在の建物のコンディションや劣化状況なども判定基準となるからです。
定期的な修繕・メンテナンスを怠っているとたとえ建築当時には耐震基準を満たしていても、築年数の経過と共に大地震発生時には「倒壊する可能性が高い」と判定されてしまうのです。
耐震性が落ちる原因は何?
耐震診断結果に影響を及ぼす劣化度には次のようなものがあります。
・屋根葺き材の変退色、割れ、欠け等の有無
・雨樋の変退色、割れ、欠落等の有無
・外壁仕上げ材の割れ、変退色、ずれ、欠落、シール切れ等の有無
・露出した躯体の水染み跡、腐朽、蟻道、蟻害等の有無
・内壁の水染み跡、亀裂、カビ等の有無
・床面の傾斜、過度の振動、床鳴りの有無
・基礎の亀裂や床下の部材の腐朽、蟻道、蟻害の有無 等
耐震診断というと、壁の中に筋かいなどの補強材が入っているか、天井や屋根裏に火打ちなどの耐震性を高めるための斜め材が入っているか、部材の接合部は金物で緊結されているか、基礎に鉄筋が入っているかなどが判定基準になると思われがちですが、建物の現在の劣化状況も重要な判定基準になります。
そしてこれらのことは、住宅のホームインスペクションを行うことでも知ることができます。
一般的には1981年(昭和56年)6月に改正された「新耐震基準」で建てられた建物であれば「震度6~7でも倒壊しない」といわれていますが、経年劣化が進行している建物の場合には、決して安全とはいえないのです。
屋根の重さでも耐震性が変わる?
さらに屋根の重量が建物の耐震強度に大きな影響を及ぼします。
屋根の重さは地震があった際の建物の揺れの大きさに影響し、屋根が重い建物ほど揺れが大きくなります。
すなわち屋根が重くなるほど、地震による揺れに耐えるための壁量が必要になります。
一方で、ガルバリウム鋼板やスレートなどの軽量な屋根材の住宅は、陶器瓦やセメント瓦などの重い屋根材の住宅よりも同じ壁量であれば丈夫だといえます。
このことから屋根材の葺き替えによる「屋根の軽量化」は、以前から代表的な耐震改修工事のメニューのひとつになっています。
以上のことから、木造1~2階建住宅の耐震性能をセルフチェックするためのチェックリストがあります。
中古住宅を購入する際にも是非参考にしてください。
建物の耐震性に関するチェックポイント
- 建てられたのは昭和56年(1981年)5月31日以前
- 今まで浸水や火災、地震などの大きな災害に見舞われたことがある
- 増築の繰り返しや建築確認なしで増築したことがある
- 老朽化しており、シロアリの被害など不都合が発生している
- 建物の形がL字やT字など複雑な平面になっている
- 一辺が4m以上の大きな吹き抜けがある
- 2階外壁の直下に1階の内壁または外壁がない
- 1階外壁の東西南北各面のうち、壁が全くない面がある
- 屋根材は瓦などの重いもので、1階には壁が少ない
- 鉄筋コンクリートの布基礎・ベタ基礎・杭基礎などの基礎は使用していない
出展:誰でもできる我が家の耐震診断
(財団)日本建築防災協会耐震支援ポータルサイト
まずは上記のチェック表を使って建物を自分でチェックして、3つ以上該当する項目がある場合には、専門家に相談して耐震補強に向けてのアドバイスを受けるようにしましょう。
中古住宅を購入しようとする場合も同様です。
耐震診断には補助金が使える?
また近年では全国のほとんどの自治体に、耐震診断や耐震補強工事の補助金制度があります。
そして国においても一定の耐震改修工事を行った場合には、所得税が一定額控除されたり固定資産税が減額されたりするので、一度調べてみると良いでしょう。
『かめだの部屋』住宅診断士・ホームインスペクター 亀田