ホームインスペクションで見つかった悪質なリフォームの事例

中古住宅を購入する前に購入希望者に依頼されてホームインスペクション(住宅診断)を行うと、時々悪質なリフォーム工事が行われたと思われる形跡が見つかることがあります。

そして物件の売主様(建物所有者)もそのことに気付いていないことが多く、「数年前に○○万円もかけて耐震補強のリフォームを行っているので安心だ」などと得意げに話すことも少なくありません。
売主様には決して悪気があるわけではないので、購入希望者もつい信用してしまいがちです。

そこで今回は、中古住宅の購入前のホームインスペクションで見つかった悪質なリフォームの事例について代表的なものを一部だけ紹介したいと思います。

ほとんど効果がない耐震補強工事

悪質リフォーム業者の手口の多くが言葉巧みに「自治体から依頼されて現在住まいの無料点検を行っています」などといって室内に入り込み、床下や天井裏の点検を行います。(実際には点検を行っているふりだけのことがほとんどです)
そして「シロアリによる被害を受けているので、このままでは地震で家が倒れる」、「耐震性が低いので大地震が発生すると倒壊する危険がある」といって居住者の不安を煽るのが常套手段です。

しかし自治体から点検を依頼されていることなどはなくて、点検を行っているのは決して建築の専門家ではありません。
ほとんどが建築知識のない悪質なリフォーム会社の営業マンといって良いでしょう。
そして提案する耐震補強工事と称する工事は、全く効果のない工事といえます。

その代表的なものが、床下の床組みや天井裏の小屋組みに数多くの金物を取り付ける工事で、1つ数千円から数万円の金物(実際にはそれほど高額ではないものがほとんど)が数多く取り付けられます。
そしてこれらの金物は、耐震補強にはほとんど意味のない場所に設置されています。
一見すると非常に強固になったように見えますが、床組みや小屋組みだけどんなに丈夫にしても、大きな地震には建物自体が耐えられません。
お金のあるお年寄りが狙われて被害にあうことが多いので、注意が必要です。

ほとんど効果がない耐震補強金物と称する金物

※小屋組みに取り付けられたほとんど効果がない耐震補強金物と称する金物
同じ様な金物が床下に取り付けられていることも多い

リフォーム業者に家を壊される??

次に紹介するのは、床下の基礎コンクリートが壊されてしまっている事例です。

建物の強度低下をまねく基礎のハツリ

※建築後に床下の基礎コンクリートが壊されたと思われる事例
 この建物ではこのような箇所が複数見られた

中古住宅のホームインスペクションを行っていると、床下でこのような事例を時々目にします。
建築後にシロアリ防除工事を行った際に、床下に侵入するために壊されたと思われます。
この他にも床下の湿気を防ぐための床下換気扇を設置するリフォームの際に基礎コンクリートを斫ってしまうケースがありますが、建物の強度が低下してしまうことは明らかです。

現在ではこのような工事が行われることはほとんど見かけなくなりましたが、古い中古住宅を購入する際には注意が必要です。

騙されやすい屋根のリフォーム

最後に紹介するのは、瓦屋根のリフォーム事例です。
瓦は耐用年数が80年~100年と非常に長いことがメリットですが、経年でズレや浮きが発生しやすくなります。
そこで瓦同士をシーリング材でつなげて固定することで、落下防止対策になります。
これをラバーロック工法といいます。

この工法はインターネットなどで「訪問販売業者が提案する悪質な屋根リフォーム工法」と紹介されていることがありますが、正しく施工することで地震によって瓦が落下してしまうのを防ぐことができます。

本来の正しい施工方法は、瓦の山の左側と下側の一部にL字型にシーリング材を充填して、瓦を固定しつつも雨水が瓦内部に滞留してしまうことがないように雨水の通り道を確保します。

しかし瓦の全周を隙間なくシーリング材で埋めてしまうと、雨水の通り道を確保することができなくなって雨漏りを起こしてしまいます。
このような間違った施工事例もホームインスペクションを行っていると稀に見かけるので、注意が必要です。
またこうしたケースは悪質な業者というよりも、正しい施工方法を知らない業者が誤って行ってしまうことが多いようです。

特に屋根のリフォームでは、注文者自身が直接屋根に上って確認することができないことが多いので、第三者の専門家による検査をおこなっておくと安心です。

瓦のラバーロック工法

屋根瓦のリフォーム事例(ラバーロック工法の正しい施工例)

このようにリフォーム済みの中古住宅を購入する際には、いつどのような工事を行ったのかについて注意が必要です。
目に見える部分については綺麗になっていても、見えない部分には不具合が隠れていることが決して少なくありません。

不安が残る様であれば、専門家によるホームインスペクション(住宅診断)をおすすめします。

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『かめだの部屋』住宅診断士・ホームインスペクター 亀田