住宅の床の傾きを考える
こんにちは、千葉市の住宅診断・ホームインスペクション事務所 アフリスペック一級建築士事務所です。
数年前に横浜市のマンションの傾きについての問題が報道され、自宅は大丈夫かと心配に思った方も多いのではないでしょうか。
新築住宅(建売り住宅・分譲住宅・ハウスメーカー)や中古住宅の内覧会等の立会い検査のときにも気になるところです。
住宅の床の傾きを考える
今回は、最初は分からないけれど後から影響がでる不具合のひとつである「傾き・傾斜」についてお話しします。
その傾きは劣化によるものなのか、施工時の欠陥によるものなのか、それ以外の構造的なものなのか少し見ていきましょう。
住宅が傾く原因
家の傾きはなぜ起こるのでしょうか。
その原因を考えてみましょう。
床(仕上げのフローリング)が傾いている
建築時に、傾いたまま床が施工されたケースです。要するに施工不良・欠陥です。床の施工をやり直すことで傾きを解消することができる場合があります。
また床のフローリング自体のたわみが原因で波を打っている場合もあります。
また、床の作り方も一つではなく、通常の在来工法、ツーバイフォー(2×4)工法、軽量鉄骨造(ALC造等も含む)、マンション等のRC造(鉄筋コンクリート造)等の構造の種類によってもそれぞれ異なります。
建物が傾いている
建物全体が傾いてしまったケースです。耐震性においてもリスクがあります。
傾きを解消することについての難易度は上がりますが方法が無いわけではありません。またこの場合には地盤や基礎、高台であれば擁壁・土留めに問題があるなど要因は様々です。
地盤・基礎に問題がある
建設前に地盤調査を行わなっていなかったり、適切な基礎の設計がされていないときに起こるケースです。
既存の建物に影響させずに傾きを解消することはかなり困難ですが、こちらも直せないことはありません。お悩みの方は方はお問い合わせ下さい。
腐朽・蟻害(シロアリ)・水漏れ・雨漏り
腐朽や蟻害で傾きが起こるのは、それなりの経過を辿った後です。雨漏りや水漏れが根本的な原因となっている可能性もあります。『風が吹けば桶屋が儲かる』ではないですが、住宅の事象に関してはあながち否定も出来ないことが多いです。
傾きで体調不良?
では、傾きによる人体への影響はどのくらいあるのでしょうか。
日本建築学会がまとめた複数の研究結果(復旧・復興支援WG「液状化被害の基礎知識」建物の傾きによる健康障害)によると、0.29度の傾きで傾斜を感じ、0.46度になると苦情が多発するようになるのだそうです。ちなみに、ビー玉が転がるくらいの傾きは0.34度です。
個人差はありますが、床が水平でないことへの違和感から始まり、ひどい場合には、めまい・頭痛・吐き気・食欲不振などの様々な健康障害が発生します。慢性的な体調不良は、もしかすると家の傾きが原因かもしれません。
自分でチェックしてみよう
このように、家の傾きには大きなリスクが隠れています。すぐに簡単にチェックがしたい!という方は、以下の方法を試してみてください。
ビー玉・スチールボール
セルフチェックの方法のなかで最も一般的なやり方かもしれません。
ビー玉やスチールボールを床におき、転がるかどうかを観察しましょう。
この時、どの部屋においても勢いよく同じ方向に転がる様な場合は要注意です。
建物が全体的に傾いている(不同沈下)可能性がありますので詳細な調査をしてください。
また、少しだけ転がって止まった。という場合には仕上げ材(フローリング等)のたわみによるものの可能性が高いですので、それほど気にする必要は無いかもしれませんが、あまりにひどい場合には前述した健康被害の観点からすると、修繕をしておくことが望ましいかと思います、
水平器
傾きの角度を測ることができる水平器は、ホームセンターで手に入れることができます。使い方によってはビー玉を転がすよりも正確に調べることができます。
ただしあまり長さの短い水平器だと部分的なたわみ等も拾ってしまう為、真っすぐな木材の上に水平器を乗せる等の工夫も必要です。デジタル機能が付いているとその傾き量は一目瞭然です。
スマホのコンパスアプリ
便利な世の中ですね。水平器機能を有したアプリを利用することで、スマートフォンで傾きを測ることができます。
レーザー墨出し器(オートレーザー)
これはプロが使うものでちょっと難しそう…って思っていませんか?
実はそんなに難しくはないんです。
レーザーのスイッチを入れると、自動的に水平・垂直のラインが照射されます。
そのレーザーラインと、床 又は 壁の距離を測ることで傾きの量を知ることができます。
床の傾斜は、建築物の劣化事象の一つです。
また、その傾きは既存住宅売買瑕疵保険に加入する際にも指標の一つとされています。
しかしこれがあるから建物全てがダメというわけではありません。
傾きの原因としては、仕上げの不具合による軽微なものから、構造自体(基礎から傾く不同沈下や、基礎の劣化が伴うものなど)が傾いている重大なものまであります。
その他に、窓やドアの開閉がしづらい、サッシの鍵がかからないなどの状態がおきている場合も構造(梁や柱)の歪みが原因になっている可能性もありますので要注意です。
専門家の調査
傾きがどのくらいで、何に起因しているのか・・・。こういったことはセルフチェックだけでは分からないですね。
実際に建築ではある程度の部材のたわみが許容範囲とされていたり、施工誤差を考えたうえで設計がなされています。少し転がる位はあり得る範囲ですが、著しく一方向に転がる場合には注意が必要です。
そういう時は専門家に調査をしてもらうと良いでしょう。
床の傾きに関して言えば、3メートル離れた位置において6/1000以上の傾きがあると、建物状況調査の劣化事象に該当します。住宅診断(認定インスペクション)基準で話をするならば、3/1000以上の傾きは問題がある可能性を疑う範囲となります。
アフリスペックでは、目的に合わせて住宅診断をカスタマイズできる認定インスペクション(住宅診断)を行っています。また、中古住宅を購入して将来的に建替えることをお考えの方には、認定インスペクション(住宅診断)と同時に地盤調査もお勧めしています。
どうしたらいいのか分からない時
床が傾いていると、何だか気持ち悪いですよね。
そしてその原因が何かわからないと尚更です。
劣化事象や不具合の原因を探ることは少し不安かもしれませんが、悪いところを知ることでどうしたら良いかの対策をすることができます。
そんな場合にはお気軽にお問い合わせ下さい。
千葉市の住宅診断・ホームインスペクション事務所 アフリスペック一級建築士事務所でした。
それでは。